外国人投資家の視点 今、日本株をどう見ているか?

概況


アライアンス・バーンスタイン 日本株式セミナー 前編(→後編)

最高経営責任者兼会長 ティモシー・ライアン氏

最高経営責任者兼会長
ティモシー・ライアン氏

アライアンス・バーンスタイン・リミテッド(英国)
最高経営責任者兼会長 ティモシー・ライアン氏

アライアンス・バーンスタインは3月8日に日本株式セミナーを開催。円高やデフレの影響で長らく低迷を続けてきた日本株だが、新政権発足に伴う円安の進展をきっかけに、世界的にも再評価の機運が高まっているという。セミナーでは海外投資家から見た日本株の魅力、新局面におけるバリュー株運用の投資機会などが語られた。前編となる今回は、イギリスより来日したアライアンス・バーンスタイン・リミテッド(英国)の最高経営責任者兼会長であるティモシー・ライアン氏が語った「外国人投資家の視点」を紹介する。

日本株式のパラドックス/外国人投資家の矛盾

外国人投資家は長らく日本株に対して悲観的だった。20年余りにわたる政治経済の停滞、繰り返し短命に終わった回復期待など。その上、彼らは「累積政府債務」「高齢者への配慮」「企業資本」「円の評価」などの面で「日本は過剰だ」と考えている。

このように外国人投資家は日本株をネガティブに見ているにもかかわらず、東京株式市場の取引量の過半を占めており、持ち株比率も依然として高水準。1990年の5%から一貫して増加を続け、2012年末には27%に達している。

このような矛盾を抱える外国人投資家たちは、日本の株式市場のどこに魅力を見いだしているのか? 彼らは運用戦略上の理由というよりも、日本が持つ構造的な要因から、次の5つのポイントを考慮しているようだ。

(1)投資機会:日本は世界GDP(国内総生産)の9%を占める主要な経済国の1つ。長らく低迷が続いていたとはいえ無視できない。

(2)機会コスト:過去20年間日本株に投資していなかった場合、1995年、99年、2005年、12年の4回アンダーパフォームの要因になった。

(3)魅力的な企業:自動車やエレクトロニクスなど、とりわけ製造業で競争力の高い企業が多数ある。

(4)新興国へのエクスポージャー:日本企業は中国など新興国でのビジネスがうまく、新興国のエクスポージャーを簡易かつ割安に得ることができる。

(5)企業のキャッシュフロー:企業部門のキャッシュは潤沢で株主還元の余地も大きい

金融緩和の効果を信じる外国人

図1 外国投資家の日本株への確信度

図1 外国投資家の日本株への確信度

そして2012年12月の政権交代をきっかけに、外国人投資家の日本株への見方に変化が生じている。(図1)例えば「金融緩和」。当社の調べでは、日本のエコノミストは緩和策がGDP成長率に与える影響を「限定的」とする一方で、米国のエコノミストは少なくとも40ベーシスポイント、強気だと120ベーシスポイントの押し上げ効果があると回答。英国のエコノミストは150-200ベーシスポイントの押し上げ効果を期待している。

注目度増す日本株

世界のファンド・マネジャーに日本株に対する評価を尋ねると、「割安」との意見が「割高」を10%ポイント上回った。ところが英国のファンド・マネジャーは現在、日本株に5.5%しか投資しておらず、これはMSCIワールド指数に占める日本株比率の9.9%を大きく下回ることから、今後の引き上げ余地が期待される。

また、MSCI日本指数構成銘柄について過去の推移を見ると、日本株のバリュエーション拡大への期待が高まる。2010年以降にROE(株主資本利益率)がマイナスから8%程度へと向上する中、PBR(株価純資産倍率)は1倍前後で横ばいを続けており、相関関係にあるはずの両者に大きなギャップが生じている。

図2 最も確率の高い次なる大きなマクロイベント

図2 最も確率の高い次なる大きなマクロイベント

世界のファンド・マネジャーに、2013年に予定される世界の主要な5つのマクロ経済イベント、(1)1ドル=100円に、(2)米国格付け引き下げ、(3)スペイン救済、(4)米失業率が7%以下に、(5)金価格が2,000ドル突破――について聞いた。最初は今年1月、そして1カ月後に、これら5項目が発生する“確率の高さ”を質問すると、大きな変化が見られた。(図2)(2)から(4)までを「最も確率が高い」とする声が減少する一方で、(1)の円安だけが増加。足元では回答者の4割が円安進行の確率が最も高いと考えているようだ。円安トレンド自体は昨年11月から続いているにもかかわらず、短期間でこれほど認識が大きくシフトした点は興味深く、日本市場への関心度合いの高まりがうかがえる。

台頭する個人投資家の行動

近年、世界では構造的な変化が起きている。人口構成の推移を受けて、すべての先進国は年金制度の見直しを余儀なくされ、あるいは、自己資本規制の強化によって株式保有の資本コストが上昇。機関投資家はレバレッジ解消をせざるを得ない状況になり、いまや機関投資家は世界の株式市場で巨大な売り手と化している。

これに代わるのが個人投資家だ。退職資金確保のために株式投資による高リターンを求める必要があり、こうして機関投資家から個人投資家へのリスク移転が、米英豪など世界各地で進んでいる。この傾向は、世界規模で高まるインフレへの不安感、米国QE(量的緩和策)など金融緩和の可能性などにも後押しされて、ますます強まることが予想される。

外国人投資家がもたらす影響

図3 各国市場における外国投資家による保有比率

図3 各国市場における外国投資家による保有比率

リスク調整後リターンの最適化が求められる中、各国では自国内での株式調達からグローバル株式へのシフトが進んでいる。世界各国市場で外国人投資家の存在が拡大しており、ドイツでは保有比率が過半数を超えるまでに。(図3)当然ながら、日本株市場もこの恩恵を享受するだろう。

このような外国人投資家の持ち株比率の上昇は市場に流動性をもたらし、取引コストの低減にも寄与するなど、市場全体にはもちろんのこと、個別企業に対しても長期的にポジティブな影響を与えている。往々にして企業のガバナンスは向上、中長期的なバリューも向上する傾向が見られる。

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