グレート・ローテーション(大転換期)の投資戦略と日本株市場のポイント 日興アセットマネジメント

概況


2013年は債券から株式への資金の大移動「グレート・ローテーション」に注目が集まるが、果たして投資家はどのような投資手法をとるべきか――。日興アセットマネジメントは2月28日、報道関係者を対象とした勉強会を開催。グローバルな視点から見た日本株式市場の現状や今後注目すべきポイントなどが語られた。

ユーミン・ワン氏

ユーミン・ワン氏

グレート・ローテーション~新潮流とその投資戦略~

CIO-インターナショナル ユーミン・ワン氏

■日本は世界の「先行指標」

日本は、いろいろな意味で世界の先頭をいく「先行指標」になっている。20年間にわたるデフレを経験。その間、日本は量的緩和やゼロ金利政策など、前例のない試みを実践し続けてきた。世界の先進国が今後経験するであろう人口の高齢化への対応においても、世界に先んじているといえる。

そして今、デフレからの脱却を果たしながら、なおかつ急激なインフレを引き起こさない「正常なインフレ」への移行が期待されているが、これは達成可能だろう。政権が変わったことはもちろんだが、なにより、国民がデフレに疲れ果てている。GDP(国内総生産)デフレーターはここ20年間で32%も下落。昨年の衆院選で国民がNOを突きつけたのはその表れだ。

■日本のリフレを世界が後押し

国民の支持という追い風に乗る限り、現政権はあらゆる手段を使ってデフレ脱却を成し遂げようとするだろう。日本の脱デフレ政策は米国も支持しており、その米国は、金融危機の原因ともなった住宅市況が改善傾向にあることなどから、マーケットからの支持を高めつつある。米国が世界のリーダーとしての自信を取り戻すことは、当然、日本にとってもプラス。こうして国内外の環境に支えられ、日本にはリフレという新しい環境が誕生するだろう。

■2015年までの「3つのトレンド」

「トレンドはともだち」が私のモットー。今後想定される3つのトレンドは次のとおり。

トレンド(1)インフレの正常化:日本だけでなく世界でインフレ率が上昇するだろう。新興国にとっては重い問題だが、これまでデフレのリスクにさらされていた先進国では企業業績の向上が期待される。結果、株式への注目が高まり、一方では金利リスクの高まりから、長期債券には手を出しづらい状況に。

トレンド(2)通貨:中期的には円安トレンド、米ドル人気回帰が続くとみる。自国通貨の価値が損なわれる日本人投資家にとってこの円安トレンドは当然リスクを含むが、裏を返せばリターンの源泉にもなり得る。分散を図ってアクティブ運用をするなど適切な管理がカギに。

トレンド(3)インカム志向:今日の典型的な投資家像は、インフレに悩まされた1970年代の投資家像とは大きく異なっている。個人マネー全体に占めるシニア層の比率は高く、こうした層が想定する投資期間は必ずしも長くない。かつてのようにハイ・リターンを狙うよりも、リスクを避け、高配当、高利回りの株式などが選好されるように。このインカムを重視する傾向は数十年続くだろう。

■注目すべきアセットクラス

今後インフレ期待が拡大する中では、価格決定力を持ち、財務良好な企業の株式や債券などが選好されるだろう。そのほか、資源関連株や資源国通貨、貴金属などのハードコモディティ、物価連動債など、インフレから恩恵を受けることが期待されるアセットクラスにも注目したい。

丸山隆志氏

丸山隆志氏

運用担当者が語る、日本株式市場の注目ポイント

株式運用部長兼オルタナティブ運用部長 丸山隆志氏

■「出遅れ日本」の原因

日本株は昨年の衆院解散を機に大きく回復しつつあるとはいえ、リーマン・ショック以降の期間で見るとグローバル株式の中で大きく出遅れている。1月末時点の状況をみると、リーマン・ショック前の高値水準に近づいているS&P500指数に比べ、TOPIXは現地通貨建てで5割ほど、米ドル建てでも6割ほどの水準にすぎない(※)。

(※)2000年1月を100として計算。その後、日本株は上昇したが、米国株も上昇しているので、3月末でも日本株の出遅れ度合いは1月末と大きな違いはない。

原因は「円高」「東日本大震災」「政治」。為替はあらゆるファクターの影響を受けるが、根本的な問題として、各国中央銀行のバランスシートを比較すると、日銀だけが規模のさらなる拡大に消極的だったことが分かる。世界のマーケットは、この点を物足りなく感じていただろうことは容易に想像される。

リーマン・ショック以降の金融危機、東日本大震災などの非常事態に直面したにもかかわらず、毎年のように首相が変わる政治状況では、政策がスムーズに実行されるはずもない。以前の日本の政治的の混乱は、間接的に、企業活動に悪影響を与えてきたといえる。

■アベノミクスの本質

日本の今後を占う上で最も重要なのは「アベノミクス」の効果。実体経済にしっかりと影響を与えられるかどうかにかかっている。

「期待感先行」と切り捨てる論調も聞かれるが、それはアベノミクスを真の意味を理解した議論とはいえない。まずは人々の「期待」に働きかけ、これを使って資産価値の上昇を通じて、デフレから脱却し、ノーマルな経済を取り戻そうというのがアベノミクスの本質だからだ。

■「波及効果」検証

政策波及効果イメージ

政策波及効果イメージ

政策効果が波及するイメージを図示すると2のようになる。最終的には一番右の「インフレ率上昇」と「信用創造の回復」までを達成して、豊かさと希望にあふれる経済の実現を目指すアベノミクスだが、今後、具体的に各施策がどのような効果を生むのか? 株式市場はその効果を1つ1つ予測・検証しながら、買い進めるかどうかを判断するという手順を当面、繰り返すことになるだろう。

「金融緩和」による「予想インフレ率上昇」についてはひとまず株式市場が反応しており、まずまずのスタートといえそうだ。次に「資産価値上昇」。多くの人が不動産をイメージしているようだ。続く「消費増加」とともに、具体的な数量効果の確認が待たれる。

足元では百貨店の高額消費が好調といったニュースが聞かれ、また、内閣府の消費動向調査や景気ウォッチャー調査などを見ても、消費者マインドの変化の兆しが見てとれる。例えば景気ウォッチャー調査では乗用車の販売会社からポジティブな声が聞かれており、今後は円安進行とともに輸出が増加、その効果が貿易統計などで明らかにされるだろう。

ちなみに「資産価値上昇」だが、米国のように家計部門の株式保有比率が高くない日本でも、全体的なムードが良くなることで、株価上昇をサポートすると考える。但し、政府は「株価上昇に伴う資産効果」だけでは、将来的に力不足となる可能性を意識していると思われる。だからこそ、首相自ら経済団体に労働者の賃金引き上げへの協力を求めているのだろう。

問題は「設備投資増加」以降のプロセス。企業は長期的な視点で戦略を立てるため、円安基調や国内景気回復の初動段階では決断は難しく、今後の動向が注目される。

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