公的年金“巨象の実像”(上)  「資金配分変更」4月から検討本格化へ

インタビュー 概況


日本株は水準訂正の過程
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人) 三谷隆博理事長に聞く

GPIF 三谷隆博理事長

GPIF 三谷隆博理事長

新年度入りを目前に、公的年金の動向が市場の関心を集めている。2月頃に複数のメディアから「2013年度中に運用資産配分を見直し、日本株比率を高める公算」などと報じられていたためだ。アベノミクス相場がスタートした昨年11月以降は信託銀行の売り越しが突出。年金のリバランス売りも観測されるところだが、運用資産100兆円を超える“世界最大の機関投資家”GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方針はどうなるのか。三谷隆博理事長に話を聞いた。

事務方は、既に準備作業中

――基本ポートフォリオの見直しは行うのか。

「会計検査院から(ほったらかしにしてきた)基本ポートフォリオを見直してはどうかと指摘を受けた。どのような考え方で実施すべきかについて、現在、事務方では、一連の準備作業を進めている。4月からは運用委員会で議論してもらい、相談しながら内容を決めていくことになる」

――本来、基本ポートフォリオは、厚生労働大臣が年金財政見通しなどを提示し、その考え方に沿って決定するものでは?

「第2期の中期計画がスタートした時期は、政権交代から日も浅く、また、当時の総務大臣と厚生労働大臣の方針が大きく食い違っていたこともあって、具体的な指針は何も示されなかった。単に『安全で、効率的で、マーケットに影響を与えないこと』とされたため、あくまでも暫定的に第1期のポートフォリオを継続した経緯がある」

2年後には次期中期計画もスタート

――今回は、GPIFのフリーハンドでの見直しということになるのか。

「そう言えないこともないが、2年後には3期目の中期計画が始まる。来年の財政検証と食い違うわけにもいかず、こちらで『勝手にやる』というものではない。また、今夏には新しい社会保険制度の骨格が決まることもあって、現在は、微妙なタイミングにある。運用委員会開催は原則月1回。多少ペースを速めても、いつまでにまとまるかは読み切れないが、われわれで案を固めた後、認可を申請。厚生労働大臣は財務大臣と協議し、独法評価委員会の意見も聞いて認可の可否を決めるという手順になる」

――GPIFと運用委員会との“力関係”は。

「厚生労働大臣の任命する運用委員会は現在10名で構成されている。独立行政法人という組織は本来、『理事長がすべて決める』という建て付けになっているが、われわれは、重要事項では、運用委員会の意見を聞いた上で、最終的に理事長が判断することになる」

――公的年金の運用改善は1月の緊急経済対策にも盛り込まれた。日本株保有増加への政治のプレッシャーは感じないか。

「全く感じない。あくまでも自然体だ」

――例えば、現在の物価上昇率前提「1%」を(日銀の掲げた)2%に上げれば、その分、運用目標も上昇し、日本株式を含むリスク資産の向上が必要になるのでは。

「そうなるだろう。ただし、実際には、2%前後の物価上昇率を持続的にキープすることは至難の業だと考えている」

マーケット動向には最大限の配慮

――12月末の国内株式比率約13%は、既存の基本ポートフォリオの11%(5-17%まで許容範囲内)を超え、逆に国内債券は約60%と同67%(同59-75%)を大きく下回る。昨今の上昇で、さらに比重の高まった日本株はリバランスの売りが必要か。

「基本ポートフォリオの配分比率を上回るのは国内株式だけではない。円安も加わって外国株式や外国債券も増加した。国内株式の比重が高まったといっても、まだ許容幅に余裕がある。また、仮に売るにしても、極力マーケットに影響を与えないよう心掛けており、『あっ、GPIFが売ったな』と思われるような売り方はしない。リバランスの実施は、市場動向のほか、相場の水準なども勘案して決めている」

海外金融機関トップの来訪も相次ぐ

――「相場の水準」という点では、現在の日本株をどう見ているのか。

「あくまでも個人的な意見だが、まだ『下げ過ぎた部分』を十分取り戻したわけではない。ようやく日経平均がリーマン・ショック前の水準に達したとはいえ、2007年には1万8000円台に買われていた。米国株が史上最高値を付け、あれだけガタガタした欧州株も、かなりいいところまで戻ってきたことと比較しても、まだ水準訂正のプロセスにあるのではないか。今年に入って、(当社の運用委託先である)海外金融機関トップの来日が増え、よく訪問を受けるが、半年前とは様変わりで、日本に対する関心が高まっている。アンダーウエートとされてきた日本株の比率を引き上げる動きは、まだ続きそうで、しばらくは、このまま調子のいい相場が続くのかなと感じている」

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