株式相場の現状と今後の展望 はしゃがず、騒がず、淡々と、割安株、出遅れ株拾いに徹する

概況


大和住銀投信投資顧問  苦瓜達郎ファンド・マネージャー

大和住銀投信投資顧問 
苦瓜達郎ファンド・マネージャー

先行きは強気、まだ戻り余地大きい

大和住銀投信投資顧問
苦瓜達郎ファンド・マネージャーに聞く

日本株市場は昨秋から地合い一変。ファンド・マネージャーは現状をどうとらえているのか、どのような見通しを持って投資しているのか。大和住銀投信投資顧問で中小型株運用を中心に手掛ける苦瓜達郎ファンド・マネージャーに聞いた。

■現状認識

「株価があるべき水準に戻る過程と認識しているが、上昇速度の割にファンダメンタルズはさほど改善しておらず、居心地はよろしくない。私は常に、上げ相場に居心地の悪さを感じる方ではあるが」

■アベノミクスについて

「私はそもそもアンチ・リフレ派。アベノミクスには疑問を抱いている。理由は大きく3つ」

「日本はデフレではない、とみていることが1つ。消費者物価指数の下落率は、近年0-1%程度で推移しており、この程度であれば、ディスインフレ(物価上昇率が低く、インフレが収束した状態)、もしくは、ごく弱いデフレだ」

「消費者物価指数を見る上では、細目にも目を配りたいものだ。消費者物価指数の下落要因としては、薄型テレビやパソコンなどの技術革新が速いデジタル製品の押し下げが大きい。例えばパソコンの性能が1年前に比べ2倍になり、価格が1年前と同じく10万円の場合、指数計算上では5万円へ下落したと見なされる。価格が変わらず、性能が良くなると、性能の進歩分は豊かになった、と見なして計算されているわけだが、比較するものを間違えているような気がしてならない」

「2つ目は、日本は企業・消費者とも長期のディスインフレに完全に適応してしまっているため、需要刺激策によって物価が上がるのか疑問を持っている。むろん、円安に伴い輸入品とコモディティ、公共投資の予算拡大に伴い建設分野などの価格は上がるだろうが、これら以外の価格はそう簡単に上がるまい。あるとすれば、上がってほしくないものが上がり、上がってほしいものが上がらないという展開だろう」

「3つ目は、物価が上がったら幸せになるのか、ということ。少なくとも年金生活者にとってインフレは逆風になる。金利が上がればまだ救いがあるが、金融緩和政策によってしばらく低金利が続くとみられる。そうした状況でのインフレは、消費意欲が最も強い高齢者の懐を直撃する可能性があり、悪影響が懸念される」

■アベノミクスの効用

「デフレ脱却目標が掲げられたことで、日本はデフレ経済にあると勘違いしている人々の一部が、先行きに期待を寄せ、これまでのリスク回避姿勢から“宗旨替え”をして、リスクをとる姿勢に変化してきた。この変化は、“新しい勘違い”だとは思うが、悪いことではない」

「この10年、リスク資産への低評価から、国債高・株安状態が続いた。インフレとなればリスク資産に人々の関心が向かうことから、株式投資にはフォロー。アベノミクスの副作用はあろうが、何かしなければならないということを広めたことは悪くない。また、財政出動にしても、安倍政権はお金を使い過ぎないよう、意外とブレーキをかけている。麻生財務相-財務省ラインは周りを上手にだまし、株式市場は上手にだまされたフリをしているのかもしれない」

■為替について

「円高修正もあり、経営者の顔色は全般、良くなってきている。『気』で変わる部分はやはりあるのだろう。当面の居所としては、今ぐらいの為替水準(1ドル=92円前後)が一番良いのではないか。輸入企業にしても、今ぐらいの水準であれば打撃はそれほど大きくなく、利幅が少し縮まる程度で済むだろう。インフレにしても、加速度的に進み、場合によっては止まらなくなるおそれがあることや、インフレに皆が少しずつ慣れていく必要があることなどを勘案すると、当面の為替相場は現状安定が望ましく、一層の円安はマイナスと思う」

■株価水準について

「アベノミクスは、株価があるべき水準に戻るためのきっかけでしかない。個人的には、政府・与党が、これ以上、おかしな政策を出さず、株価も現状の水準で値固めが進めばよいと思っている」

■昨秋―足元までの投資手法

「上昇相場につき、上がったら利食い、出遅れ銘柄を拾う――という従来の投資手法を続けた。この手法で10年運用しているが、上昇の初期段階ではパフォーマンスで出遅れたとしても、いつの間にか取り返し、勝利を収めてきた。今回の上昇相場においては、セクシーなポイントがなく、これまで誰も見向きもしなかった銘柄も、ヒュンヒュン上がり、含み益が膨らんでいる」

■今後の相場見通し

「野田前首相による衆院解散宣言後、しばらくは、大型株、不動産関連、バイオ関連、直近IPO(新規上場)などが日替わりで物色されたが、ここにきて物色のすそ野が広がってきた。今後は、さらに物色が多極化していくとみている」

「先行きは強気。新しい投資家が補給され、しばらく相場から離れていた投資家たちも戻ってきている。日本株はまだまだ戻り余地が大きいとみており、全体相場は上下運動をしながら、上値を抜いていく展開を想定している」

■銘柄選別ポイント

「『割安』であることがカタリスト。強腰相場が続いていることから、“自然発火”する銘柄が今後も増えてこよう。依然としてPER1ケタの銘柄は多く、こうした銘柄をローラー作戦で薄く広く拾っておくのも一法だと思う。セクター別で見ても、まだまだ上がっていないセクターの方が多い。ただし、上がったセクターの出遅れ株は、ワケ有り銘柄のケースがあり注意したい。内需型業種に関しては、価格支配力の低い銘柄なども避けたい」

「割安株のイメージだが、参考までに、ゲオホールディングス(2681)を挙げておく。ここ利益成長を続けている一方で、PERは6倍前後。お家騒動があったものの、根っこが腐っているわけではない。居抜き店舗を利用し固定費も抑えられており、非常に粘っこい企業だ」

■投資スタンス

「投資は、1年先を見ると失敗しやすい。見るのは目の前とちょっと先でいい。とにかく、はしゃがず、騒がず、淡々と、割安株、出遅れ株拾いに徹するのが吉を呼ぶ」

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