変わる「中国A株」 香港・上海市場が相互乗り入れ

概況


人民元国際化の一環

千原靖弘氏

千原靖弘氏

内藤証券 千原靖弘・中国部情報統括課長

香港・上海の株式市場の相互接続開始(2014年11月17日)から3カ月が経過した。相互接続により、日本の個人投資家も上海証券取引所のA株市場に上場する、いわゆる「上海A株」の一部に香港経由で投資できるようになった。中国株を1994年から取り扱い、現在、中国株の取り扱い銘柄数で国内随一を誇る内藤証券の千原靖弘・中国部情報統括課長に相互接続の効果などを聞いた。なお、同社は香港上場銘柄と上海B株および深センB株のほぼすべてと、相互接続対象の上海A株のすべてを扱う。

相互接続(ストック・コネクト)により、一般の海外投資家も香港経由で上海A株に投資できるようになり、一方で中国本土の一般投資家も香港上場銘柄に投資できるようになった。ただ、ストック・コネクト経由で市場に流れている資金量は、上海市場、香港市場ともに売買代金の1―2%程度にすぎない。

上海A株に香港経由で投資する際、(1)上海・香港の両市場開場日でないと取引できない、(2)開示情報が中国語③そもそも情報不足④キャピタルゲイン税が不明瞭(中国の法律上は上海株に投資する外国人投資家からキャピタルゲイン税を徴収できるが、今のところ徴収していない)――といった制約やリスクがあり、さらに中国経済の成長鈍化もあって、取り扱いに積極的な証券会社が少ないことがその理由。

参考までに、上海市場の銘柄数は1,000を超え、このうちストック・コネクト対象は500銘柄余り。ストック・コネクト対象は、上海A株と香港H株の重複銘柄、指数(上海180指数、上海380指数)採用銘柄で構成される。指数採用銘柄は6カ月に1回のペースで見直され、指数から除外されるとストック・コネクト対象から外れ、売り注文しか出せなくなる。2年連続赤字などで特別処理などが適用された場合も、ストック・コネクト対象から外れる。

■中国A株――MSCI採用の可能性も

相互接続によって、「中国A株がMSCI新興国株価指数など国際的な指数に採用される可能性」が浮上している。

MSCI新興国株価指数に関しては、既に香港株やドル建ての中国B株は採用されているが、人民元建ての中国A株に関しては、「外国人による中国本土市場投資に対し厳しい制限が設けられている」ことを理由にこれまで採用はなかった。しかし、市場開放を示す相互接続によって、上海A株など中国A株を採用しない理由はなくなったと考えられる。

中国A株がMSCI新興国指数に採用された場合、国別構成比で中国の割合は3割(現状2割)に高まるといわれ、同指数をベンチマークとする投資信託の資産規模(1兆5,000億米ドル)から、指数採用のインパクトは1,500億米ドルと試算されている。中国当局による外国人投資家規制を考えると、その試算は楽観的過ぎるように思うが、A株市場の時価総額(6兆米ドル強)、1日当たり売買代金(800億米ドル)を考えるとそれなりの好インパクトはあろう。

年内に香港・深センも接続へ

年内に香港・深セン市場の相互接続も始まるとみられている。

■シェア高める人民元――年内に日本円を抜き4位へ

株式市場の相互接続は、中国政府が推進する「経済対外開放」「人民元の国際化」の一環。

貿易など国際的な支払いに使用される通貨の比率は、1位の米ドルが4割超、2位のユーロは3割弱、3位の英ポンドでは1割弱、4位の日本円は3―4%で安定推移している。一方、人民元は近年急速にシェアを高めてきており、2012年の20位に対し、14年は5位に躍進。年内に日本円を追い越し、4位に浮上するとみられている。

人民元は購買力平価で見ると、かなり過小評価されているが、中国政府は企業、投資、金融政策への配慮から、管理為替相場をしばらく続けるだろう。長長期投資なら人民元預金も選択肢の1つだろうが、時間リスクや金利(邦銀の人民元定期預金金利は0・2―1・8%)を考えると中国株も投資候補になるのではないか。幸いなことに日本と中国の時差は小さい。

■追加利下げの公算

当面の中国株を占う意味で重要なのは「利下げ」。昨年11月21日の利下げを契機に株式ブームが再来し、上海総合指数は上げ足を速めた経緯があるが、景気が悪化していることから、年内にさらなる利下げが行われるとみている。

追加利下げを読むもう一つの理由に「株高を求める中国の民意」「利下げを求める市場の声」がある。中国政府はその成り立ちから世論を非常に気にし、つぶせるものはつぶすが、つぶせないほど大きくなると民意をくんで追認する。その例の一つが株式市場。同国では昔は株式発行は違法だったが、自然発生的にあちこちで広がり、政府が追認せざるを得なくなって株式市場が出来た。

金融は社会情勢を不安にさせる力があり、株価下落で人々の不満が高まるのを政府は望まない。

■注目銘柄

中国A株に投資したいが、個別銘柄はどうも…という方は、上海と深センのA株300銘柄で構成される「CSI300指数」に連動するETF(上場投信)がいいのではないか。ETFはiシェアーズCSI300A株指数、DBX・CSI300A株指数、WISE―CSI300中国トラッカーの3本あり、それぞれ売買単位が異なる。同タイプのETFは東証にも上場している。中国A株CSI300(1322)ChinaAMC CSI300(1575)だ。

個別では、大胆な政策を進めている上海を地盤とする政府系銀行の浦東発展銀行(60000)、中国版JTBといえる中国国旅(601888)などに注目している。

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