日本取引所グループ 「上場インフラ市場」来年3月までに開設へ インフラそのものを投資対象とする新市場

概況


年末年始に制度要綱公表

「上場インフラ市場」構想が実現に向けて動き始めた。日本取引所グループ(8697)は2013年3月に公表した中期計画で、「15年度までの上場インフラ市場開設」を掲げていたが、今年4月に更新。「14年度中(=15年3月まで)の市場開設、15年12月までの第1号上場」への前倒しを表明していた。市場開設に向けて、制度要綱の公表→パブリックコメントの募集(1カ月間)→パブコメを踏まえ規則を固める→金融庁に申請――という手続きがとられる。制度要綱の公表から金融庁の認可まで、通常2-3カ月かかることから、逆算すると、この年末年始に制度要綱が公表されることになる。日本取引所G傘下の東証に開設される「上場インフラ市場」の姿、投資魅力などを探ってみた。

■インフラ投資の選択肢広がる

これまで株式市場においてインフラ投資といえば、インフラ事業者やインフラ設備事業者に投資する投資信託の購入、もしくは、それら事業者が発行している株式の購入が一般的で、投資リターンは基本的に事業者の株価に左右される。

一方、新市場には、インフラそのものに投資し、インフラ資産の稼働から得られる収益を分配する――そうしたインフラ投資を行うファンドなどが商品上場を目指している。新市場の上場商品は個人投資家も売買でき、インフラ投資の選択肢が広がることになる。

■市場開設の背景

高度経済成長期に作られたインフラが更新期を迎える一方、国や地方自治体の財政は厳しく、投資家資金の活用が求められている。投資家の間でも、キャッシュフローが安定的で一定の配当利回りを確保しやすく、「ミドルリターン・ミドルリスク」と言われるインフラ投資に対する関心が高まりつつあり、資金の需要と供給の両面でニーズが合致していることが大きな背景。震災復興支援にもつながる。

■J-REITに近い

市場の詳細は制度要綱の発表を待つほかないが、制度設計において、最も参考にしているのは「J-REIT(不動産投信)」と言われている。「不動産という実物資産に投資し、実物資産から上がる収益を享受する」という点で、共通するため。商品上場審査期間にしてもJ-REITと同程度(2カ月程度)になるもよう。

■世界の上場インフラファンド市場動向

世界の上場インフラファンドは、03年の12銘柄に対し、その10年後に50銘柄・時価総額10兆円に拡大。投資対象は、「再生可能エネルギー(太陽光・風力・地熱など)」「発電・送電」「鉄道・空港・港湾」「道路・橋梁(きょうりょう)」「上下水道」「教育・医療施設」「森林」「ごみ焼却施設」「国家公務員住宅」など多種多様だ。

国別では米国ではパイプラインや発電所に投資する「MLP(マスター・リミテッド・パートナーシップ)」が120銘柄超上場し、時価総額60兆円規模に成長。このほか、公共施設の民営化を進めているオーストラリア、サッチャー政権下“小さな政府”を目指す中でインフラファンドの組成が進んだイギリスも先行事例に挙がる。オーストラリアでは「スーパーアニュエーション(国民退職年金)」が不動産などオルタナティブ投資に資金の20%以上を割り振っていることもインフラ投資市場拡大の一因となっている。

■日本の上場インフラ市場の将来性

日本でも「再生可能エネルギー」や、高速道路・空港など料金徴収を伴う公共施設などについて、施設所有権を公的機関に残したまま、民間事業者が運営する「コンセッション」などを取り込むことで、市場関係者からは「上場インフラ市場の時価総額は、将来的にJ-REITの半分(=4兆5000億円)程度に拡大する可能性はあるのでは」との声も。

■配当利回りはどうか

それはさておき、配当利回りはどうか。投資対象、地域などによって全く異なり、機関投資家サイドの要求利回りも「J-REITより高い方がいい」「債券より多少高ければいい」など結構まちまちのようだが、参考までにJ-REITは「3.6%」、ロンドン上場のインフラファンドは「4-6%台」。

実は、「メガソーラーはJ-REITが投資対象とする不動産に該当しないことから、かねて新たな市場開設を求める声が出ていた」ことも市場開設の背景。再生エネに関しては税制面でもバックアップ体制が構築され、「租税特別措置法施行令」の改正により、投資法人が今年9月3日-17年3月末までに再エネ発電設備を取得し、その投資口が上場した場合、法人税が基本的にゼロに。その分、配当に回せる資金が増えることになる。これに該当する上場商品は投資魅力が増す可能性がある。

■指数の公表・算出も

上場銘柄がある程度揃えば、指数の算出・公表が始まる可能性十分。ちなみに、インデックスを作成するか否かは、ニーズの有無にもより、明確な数量基準はない。実際、33業種別指数においても、空運など「10」を大きく割る銘柄数で計算されている指数が存在する。東証REIT指数も、03年4月の算出開始時の上場銘柄数は「6」だった。

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