ネット証券取引活況、信用規制緩和も後押し

概況


2月10日の日経新聞に「ネット証券取引活況、信用規制緩和も後押し」という記事が掲載されていた。今回は、この記事を杉本課長流に斬ってみよう。

今回の記事では、「インターネット証券大手7社の1月の株式売買代金は、計19兆4740億円と昨年12月に比べ86%増えた」とある。

まず気になったのが、インターネット大手7社という表記だ。SBI、楽天、松井、マネックス、カブドットコム、GMOクリック、岡三オンラインの7社だが、以前はネット証券と言えば、大手5社であったはずだ。1999年に株式手数料が自由化されたときに誕生したマネックス(当時は、マネックスと日興ビーンズ、後に合併)、カブドットコム(当時は日本オンライン)、楽天(当時はディーエルジェイディレクト・エスエフジー)が新規に設立され、対面証券の中小証券であった大沢証券を100%子会社化して、社名変更したSBI(当時はEトレード)と、対面を捨てネット専業となった松井の5社が、長く大手ネット証券5社として君臨してきた。しかし、ここに新興のGMOクリックと、岡三オンラインが加わった形だ。

下の表にこの7社の1月の月間株式売買代金を掲載したが、GMOクリックが4位に、岡三オンラインが7位に食い込んでいる。

1月の月間株式売買代金
1月約定代金 12月からの増加
増加額 増加率
SBI証券 7兆6,141億円 3兆5,547億円 87.50%
楽天証券 3兆5,041億円 1兆5,536億円 79.70%
松井証券 2兆0,956億円 1兆0,549億円 101.30%
クリック証券 1兆7,492億円 8,696億円 98.80%
マネックス 1兆7,065億円 7,313億円 75.00%
カブコム 1兆6,230億円 6,932億円 74.50%
岡三オンライン 1兆2,009億円 5,579億円 86.70%

FX取引高で2012年世界一となり、その収益で大幅なディスカウント戦略で攻めるGMOクリックと、ずっと赤字を続けながら親会社(岡三証券)の支援によりディスカウント戦略でデイトレーダー層を取り込んだ岡三オンラインが老舗の5社に割って入った形だ。

それは、さておき安倍トレード以降堅調相場が続いてはいたが、86%増というのは、異常な増加だ。これは、このコラムでも何回も指摘している信用取引無限回転の効果が絶大だからだろう。

1000万円の元手で1日10億円の売買を行うデイトレーダーもいるそうだ。1000万円の担保で1回3000万円の建玉を行うと、新規・決済で6000万円の約定代金になる。10億円の売買を行うには17回の回転売買が必要になる。5時間しか立会時間がないので、新規・決済を18分ごとにしている計算になる。

また、7社の中でも前月比の増加率に違いがある。業界を震撼(しんかん)させた手数料・金利無料の「1日信用取引」を導入した松井が101.3%増と1社だけ2倍以上の増加となっており、デイトレーダーの大口顧客を掴んでいるGMOクリック、SBI、岡三オンラインが続き、楽天、マネックス、カブドットコムが相対的に出遅れている。

しかし、収益面では、1番の勝ち組はマネックスであろう。松井は、収益に全く貢献しないどころか、赤字の「1日信用取引」が大きく増加しており、その他のネット証券も大口信用顧客向けに手数料をゼロにしたり、金利を引き下げているからだ。

マネックスの場合、このような取り組みは行って無いので、売買代金の増加がストレートに収益となったはずだ。

まあ、それでも各ネット証券が潤ったことには間違いないはずだ。創業以来赤字続きであった岡三オンラインが月次ベースで1月は黒字化したのだから、各社とも収益は好調なはずであろう。

しかし、今後もこのような状況が続くのであろうか?

確かに、日経平均の週間ベースでの連騰記録は12連騰で終止符を打ち、今後ずっとこのように堅調相場が続く保証はない。それでも、杉本課長としては続くと考える。なぜならば、今以上にもっと回転率が高まるはずだからだ。

2月7日の東証の売買高が51億4000万株となり、東日本大震災後の急落場面の11年3月15日の57億7715万株となる歴代2位の記録となった。しかし、早ければ3月末までに遅くとも今年の夏までには1日100億株の売買高の日が来ると予想する。まだ、ほんの1部の投資家だけが、信用取引無限回転を活用していない現状だが、今後もっと活用する投資家が激増するであろう。1回の取引で値幅を狙う従来の投資方法から、少ない利ザヤを回転数の多さでカバーするいわゆるスキャルピングのような新しい投資手法が流行するに違いない。

実はこのことは中・長期に投資家にも流動性の向上という大きなメリットがあるはずだ。特に個人投資家が中心の2部市場において、流動性の向上によってより大きな中・長期投資の資金を呼び込むことになろう。

今後の懸念点は、このような爆発的な増加にネット証券各社のシステム対応が追いつくかどうかだ。相場活況時にシステムダウンすれば、一気に顧客が離れることになり致命傷になる。今後のネット証券のシステム増強への取り組みに要注目だ。

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