JPモルガンAM 2013年展望  注目高まる日本株 

概況


飛躍のカギは「不確実性低下」と「政策動向」

榊原可人氏

榊原可人氏

JPモルガン・アセット・マネジメント RDP運用本部
投資調査部 エコノミスト 榊原可人氏

昨年末から著しい戻り相場が続く日本株市場。このトレンドは2013年も継続するのか――。JPモルガン・アセット・マネジメントは1月23日に報道機関向け説明会を開催。「財政の崖」問題を当面回避させた米国景気の行方、新指導部下の中国の展開など、世界の金融市場や日本株市場を占う上で注目すべきトピックについて語られた。

日本株上昇「4度目の正直」なるか?

日本株は過去3年連続で、年終盤から春ごろにかけて数カ月間、主要海外市場をアウトパフォームするというパターンを繰り返してきた。これまでは欧州債務危機や東日本大震災など外的、特殊要因によって途切れてしまったが、果たして今年はこれを維持できるかどうかがひとつの大きな潮目になるだろう。

そんな状況下で2013年の金融市場を考えるための視点として、まずは2つのキーワードを提言したい。

キーワード(1)「不確実性」

金融市場を語る際には、まず、過去の似た状況を引き合いに出すのが通例だが、近年、われわれは本当の意味で「未知の領域」に突入してしまった。最長の記録が残るオランダの10年国債金利は7月に1.53%と過去500年間で最低水準を付け、米国の国債金利も1.39%と、1940年代の過去最低水準を下回った。

こうして2012年は、取り立てて大きなネガティブ・イベントが発生したわけではないにもかかわらず、不確実性の高まりが市場参加者に強く意識された年だった。

経済政策不確実性指数

経済政策不確実性指数

続く2013年は不確実性が後退するか否かが最大のポイントになるわけだが、最近、注目を集めているデータに「経済政策不確実性指標」がある。スタンフォード大学のニック・ブルーム教授らが調査・開発した統計で、政策の影響による先行不透明感を表したものだ。例えば2011年8月の債務上限問題時には過去最高値を付けており、直近(12年11月)では大統領選後の「財政の崖」問題を前に不透明感の高まりが見て取れる。

NFIB(全米独立企業連盟)が行った調査によると、米国中小企業が感じる問題点トップ10のうち、2位が「経済状況の不透明感」、4位「政府のアクションに関する不確実性」、8位「税制やルールの頻繁な変更」となっており、こうした経済政策の不確実性が企業活動の妨げになっていることは明らか。もしも不確実性が取り除かれれば、設備投資など民間の経済活動が反発する余地は大きい。

キーワード(2)「グレート・ローテーション」

もしも「不確実性」が後退すれば、その後は徐々に「グレート・ローテーション」という段階が意識されるだろう。

これまで不確実性に直面した投資家は安全逃避先として米国やドイツの国債などに資金を滞留。さらに、各国中央銀行が国債を積極的に買い支える政策を実施した結果、両国の実質長期金利がマイナス圏で推移するなど、異常事態に陥っている。一方で株式のリスクプレミアムは過去最高水準にあり、債券から株式への資金の大移動「グレート・ローテーション」は目前とみられる。

株式と債券の10年リターン

株式と債券の10年リターン

ある証券会社からは「ステルス・ローテーション(ステルスは『見えない』の意)」といった具合に、気づかれにくいが、グレート・ローテーションは既に始まっているとの見解も聞かれる。足元では、株式と債券の10年リターンが数年ぶりに逆転しており、株式の時代が再び到来する可能性を示唆している。

しかしながら、満場一致で株式の割安度が支持されるためには、投資家心理によるところが大きいだろう。欧州債務問題はいまだ根本解決されておらず、グローバル市場は依然として不安定。今後も繰り返しリスクが高まる可能性があるものの、かつてのようにテール・リスクが再発する危険性は低下していると判断される。

以下、主要国の状況についてみてみよう。

各国の状況 (1)米国

米国の各種指標からは景気回復の兆しが見られる。危機の発端となった中古住宅の在庫は顕著に減少して、住宅価格も上昇傾向に。オバマ大統領の住宅市場に対する支援策も重要な役割をしている。

一方で、年末年始に注目された「財政の崖」は何とか回避された。“単なる先送り”との指摘もあるが、ブッシュ減税の大部分が恒久化されて不確実性が取り除かれた点は大きい。ただし、給与減税廃止の影響や自動歳出削減が加わり、年前半は景気の足を引っ張るとみる。しかしながら、企業はもともと利益水準が高く、年後半から来期は改善基調が見込めそうだ。

各国の状況 (2)欧州

危機は突然やってくるためパニックを引き起こすが、欧州問題はもはや常態化してしまった。ECB(欧州中央銀行)が昨年9月6日に発表した国債買い取りプログラムは、「パニックを起こさない」という意思決定の表れであり、支援の限度額を設けなかったことで、テール・リスク後退との認識が強まった。

各国の状況 (3)中国

昨年11月に新しい指導部が誕生。現在はまだ政権移行期にあるが、景気対策の効果が徐々に出始めている。通常の銀行以外が貸出しを行う、いわゆるシャドーバンキングを昨年夏前から許容。融資総量が再び増加に転じており、その効果が今年の景気を下支えするとみる。

一方で中国は大きな課題を抱えている。これまで投資主導で成長を続けてきたが、人件費高騰などと相まって投資効率が低下。インフレ抑制と構造転換という相反した課題を前に難しいかじ取りが求められるが、中国には「都市化」という成長の下支え要因も。

各国の状況 (4)日本

先述したように、過去3度の年初の好スタートを途切れさせたのは、いずれも外部要因だった。とはいえ海外投資家はここ10年間、日本株への興味を失っていた。現在は一部ヘッジファンドの資金が流入しているのみで、腰の据わったリアルマネーはほとんど動いていないようだ。海外投資家を呼び込めるかは、4度目の正直が成功するかどうかにかかっている。

海外投資家の過去の反応を見ると、必ずしも経済指標の良しあしは影響しないようだ。一方でドル円は密接。表面的には、円安で収益改善というロジックが支持されているようだ。ドル円相場は日米の2年金利差がかなり支配してきたが、足元では明らかにカイ離してきている。こうしてサポートがない状況で円安傾向を維持できるかが今後の大きなポイントに。

日本株は近年の低迷したレンジから上に抜け出す動きが期待される。現政権下では金融政策と財政政策が「脱デフレ」という同じ方向を向いており、景気回復への期待感は高い。今夏の参院選では消費増税の最終決定を控えており、その際には4-6月期のGDP(国内総生産)が指標になることもポジティブ。

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