【深層】を読む プロ運用者の行動原理 相場が一方通行化する背景

概況


配分変更には長時間を要す

高値を狙いつつも、急速に進む円安に対する警戒感も強い相場が最近の特徴だ。消費税10%への引き上げの決断を控えて、景気への期待感と不安感が交錯する中では、いろいろな要素に神経質にならざるを得ない格好だ。

東京市場で売買の多くを担っている海外投資家からしても、急速な円安進行は悩ましいところだ。日本経済が、以前ほどではなかったとしても、円安でメリットを受けるのは、彼らも理解している。しかし、ドル建てで運用成績を見る場合、せっかくの値上がり益が円安によって打ち消されてしまい、世界全体で見れば、良くて「並」の相場に見えてしまう。もちろん、ほかに「並」よりも高成績の市場が無いとなれば、消去法的な選択により日本株に資金が向かう可能性はあり、現状は、それがある程度効いているだろう。しかし、ほかに「並以上」の市場が出てくれば、資金が一気に逃げ去るリスクも抱えている。

年金資金やヘッジファンドなどにかかわらず、プロとして運用を担当している者からすれば、どんな相場環境であっても、運用成績が他人より劣後することは許されない。そのため、少しでも運用成績を向上させる要素があれば、ファンダメンタルズの要素からみるとベストな選択ではなくても、その市場に資金を向ける傾向が強い。

個人投資家には、「何もしない」とか「現金にして放置しておく」選択肢があるが、プロの運用者には多くの場合、運用資産を現金にして放置することは、運用方針から許されない場合が多い。プロの運用担当者が年金資金等の運用資産を受託する場合、「現金比率は◯×%以下」などと定められている場合が多く、どんな状況においても、定められた資産に対してフルに投資すること(フルインベストメントと呼ぶ)が義務付けられているのが通常だ。「あなたに運用を託している以上、どんな状況においても“運用”をしてください」という意味合いがある。つまり、どれだけ相場が低迷すると予想されていても、そして相場全体が下落すると予想されていても、現金にして放置することが許されていない。そのため、世界的に相場が下落すると予想されるならば、許される範囲の商品や市場において、もっとも下落リスクが小さいと考えられるところに資金を集中させることになる。

一方、運用資産を預託する資金の出し手からすれば、世界的に株式市場の下落リスクが高いと考えているならば、資金を預託する段階で全体の分配から株式に向かわせる資金を減らす手段を取る。これをアセットアロケーションと呼び、広い視野から方針を定める必要がある。そのため、アセットアロケーションの変更にはかなりの時間がかかるのが通例で、素早く動いたとしても年度単位、年金資金等の中期計画では、5-10年単位での変更は珍しい話ではない。つまり、日々の相場に対応するような変更は、まず不可能だ。

こういった性格の資金が多い中では、運用担当者は、日々の市場環境に対応して、より運用成績が向上する、もしくは運用成績の劣化を避ける可能性が高いところに資金を向けることになる。そして、最近の傾向として、他者と比較する相対的な成績対比が主流化しており、誰かが動けば他者が追随するといった一方通行的な傾向が強くなっている。運用担当者の差が見えにくくなり、運用担当者が全体として同一方向に動く傾向が強まっているのだ。

個人投資家としては、こういった市場の大きな部分を占める資金量の大きな投資家の行動原理、行動心理、行動原則を理解し、可能であれば先回りするだけの余裕を持ちたい。

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