基本的に債券は慎重、株式は強気 グローバルな投資環境と投資戦略(下)

概況


金利は緩やかな上昇を予想

松本聡一郎氏

松本聡一郎氏

クレディ・スイス証券 プライベート・バンキング本部
CIOジャパン 松本聡一郎氏に聞く

市場環境や資産市場の現状と見通しについて、クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部CIOジャパンの松本聡一郎氏に聞く後半(前半は9月26日付)は、資産クラス別の動向と、具体的なアセット・アロケーション(資産配分)がテーマに。じっくりと耳を傾けたい。

■資産クラス別の動向

債券

現在のマクロの見通しの前提に基づいて各アセットクラスの考え方を示したい。基本的に債券については慎重な見方をしている。株式については強気の見方をしている。世界的に金融緩和一辺倒の状態からアメリカ、イギリスなど景気回復が先んじて起きている国では、金融緩和からの出口を模索する動きになってくる。そうなれば、下がり続けてきた金利は今後緩やかに上昇圧力を受けてくる方向に転換するだろう。これがわれわれの今年の見通しの大きな一つだ。これまで顕著な金利上昇はまだ見えていないが、マーケットの関心事はアメリカがいつ利上げするかに移っている。FRB(米連邦準備制度理事会)のコミュニケーションがこれまでハト派であったため、マーケットは緩和が継続するようなイメージで動いていたが、今後はアメリカの金利が緩やかに上がり始めることを意識した動きになるだろう。一方で、ユーロ圏はより一層の緩和のアクセルを踏む。日本も今の緩和のペースを維持することが予想されるため、金利の急上昇にはならず、緩やかな上昇が起こると考えている。経済全般に対する影響も限定的とみる。ハイイールド債については、われわれは過去2年ほど投資妙味を訴えてきたが、過去の水準や格付け別倒産確率などによるわれわれが持つ理論値からみて正当化するのが難しい水準まで上昇してきていることで、6月に見通しを中立に変更した。その後、価格下落などで水準は調整したが、まだ魅力的とはいえず、現在も中立の見通しを維持している。金利はいずれ上昇見通しにあることで、クレジットで利益をとる戦略も足元は慎重なものに変わってきている。

株式

株式全般は強気の見通し、企業のファンダメンタルズはしっかりしている。バリュエーションには一部問題があるが、グローバルな株式に対しては強気の投資推奨を維持している。米国の企業業績は、売り上げ、利益とも上方修正されている。これまでは売り上げは予想に届かず、利益はリストラ効果などもあって予想を上回るという傾向が多かったが、最近では売り上げ、利益ともに予想を上回る決算が増えてきている。アメリカ株は足元でバリュエーションが上昇しており、市場間の比較では相対的に慎重な見通し。われわれもレーティングを中立にしている。ただし株式全般に強気見通しの中での中立(グローバルの市場平均並み)と考えていただきたい。日本企業の業績は、4―6月の決算では外需の収益貢献が予想以上で予想の数字が上方修正される動きとなっている。株価のバリュエーションを見ると、日本、欧州に出遅れ感がある。また、米国株の利回りと米社債利回りを比較すると、過去40年で初めてほぼ同じ水準となっている。日本、欧州の市場でも同様な状況にあり、株を配当利回りで買える、非常に良い状況にあると考えている。グローバルで見ても配当利回りでは株の割安感が目立っている。株の投資戦略でもより安定的で高配当を享受できる企業への長期投資を戦略として年初からお勧めしている。

オルタナティブ投資

オルタナティブ投資(代替的投資)では、現在ヘッジファンドとREIT(不動産投信)の一部を推奨している。ヘッジファンドは運用環境を巡る要因が改善、運用しやすい環境に戻ってきていると考えている。REITは、アメリカ、イギリス、日本はポジティブな見方をしている一方、新興国には弱気だ。コモディティ関連は見通しを下方修正している。

外国為替

外国為替は、アメリカと日本のファンダメンタルズ、金融政策の方向性の違いに基づいたマーケットトレンドの形成であることから、緩やかなドル高・円安が継続すると考えている。ただし110円を超えて円安が加速するとはみていない。110円程度が良い位置どころではないか。ユーロも、当局の危機対応が予想されたユーロ危機当時とは異なって、現在は欧米との金融政策の差を織り込んで動いていることを前提に考えれば、トレンドが継続するとの見方をしている。ユーロドルは12カ月で1.22㌦までさらにユーロ安が続くと予想している。

■地政学リスクの影響

地政学リスクについては、過去を振り返っても、第2次世界大戦のようなものは別として、マーケットトレンドに大きく影響を与えたことはない。マーケットはグローバルのファンダメンタルズを見て判断して動くことで、そこへのインパクトがどうなるかがポイントになる。地政学リスクが経済的に重要でない地域での事象ならば、金融市場への影響は限定的で、一時的にはリスク資産に手を出しにくいという環境とはなるが、マーケットの大きなトレンドに変化を及ぼすことはないとの見方をしており、現状では地政学リスクによりアセット・アロケーションを変更する必要はないと考えている。

■クレディスイス・リスクアペタイト・インデックス

クレディスイス・リスクアペタイト・インデックスは当社が開発・算出しているもの。株や債券の短期的なリスクセンチメントを計測するためのマーケット指標だ。市場参加者がどれだけリスクに対して敏感になっているのか、逆に大らかになっているかを指標化したもの。インデックスが上限を突破するとユーフォリア(熱狂)、下限を突破するとパニックとなる。その位置どころで大局観を判断してもらう。足元はニュートラルな水準にあり、ファンダメンタルズの動向をしっかり見て投資していただければ問題ないと判断している。資産クラス別の指標も発表しているが、例えば、6月初にはクレジット関係のリスクアペタイト・インデックスがかなり上の水準まで上昇し、警戒ラインに接近していた。そこでわれわれも割高とみて見通しを中立に変更した。

■戦略的アセット・アロケーション(TAA)

グローバルな景気回復を背景に株式には有利な状況にあり、株式へオーバーウエートを推奨。いずれ米金利が引き上げられる見通しにあることで米債券利回りも上昇が予想されるため、債券へのアンダーウエートを推奨。バランス型TAAで見ると、株式はベンチマークの45%のアロケーションに対してTAAは48%に増やし、債券はベンチマークの40%に対して35%に減らしている。オルタナティブ投資はベンチマークの10%に対して8%にしている。現在マーケットがわれわれの見ている方向に動いていることで、例えば、6月と直近の9月を比較すると若干の入れ替えのみで配分を大きく変更する必要は感じていない。ドルに対してより強気の見通しと、債券の中でクレジットへの投資を強気から中立にしたのが最近の細かい変更点といえる。

戻る