円安・株高が進行、リスク分散も肝要 株式は外国株にも投資を UBSウェルス・マネジメント 中窪文男CIOジャパン

概況


インフレが債券・為替・株式に与える影響~投資家の実質資産価値を守る投資戦略~

中窪文男CIOジャパン

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UBS証券は先に投資戦略セミナーを開催した。富裕層顧客向け資産運用・保全ビジネスを手掛けるUBSウェルス・マネジメントの中窪文男CIO(最高投資責任者)ジャパンが登壇し、「インフレが債券・為替・株式に与える影響について~投資家の実質資産価値を守る投資戦略とは~」をテーマに講演した。アベノミクスへの期待感から2013年は日本株が6割近く上昇するも、今年は一転して硬直相場。ボラティリティが大きく低下する中、人々の期待は二分され、今後の中長期的な相場動向に注目が集まっている。こうした環境下、安定的な収益確保に向けて、どのような点に注目していくべきかを語った。

■インフレの種類

インフレは「物価の上昇」ではなく「物価の“持続的”上昇」と定義され、物価上昇が1年以上続くことが必要。つまり、消費増税からここまでの物価上昇はデフレ下の一時的上昇といえる。

インフレとひと口に言っても、(1)クリーピングインフレ(年率上昇2-3%で忍び寄るインフレ)、(2)ギャロッピングインフレ(年率上昇5-10%で馬のように駆けてくるインフレ)、(3)ハイパーインフレ(年率上昇10%超)――と3種類に分かれる。新興国でよく見られるのがギャロッピングインフレで、日本が目指しているのはクリーピングインフレ。

■インフレを引き起こす要因

インフレを引き起こす要因としては、(1)供給が需要に追い付かず物価が上がる(=ディマンドプルインフレ)、(2)賃金や原油価格などの上昇によるもの(=コストプッシュインフレ)、(3)自国通貨安による輸入価格の上昇(=為替インフレ)、(4)お金の価値が下がり、相対的に物価が上がる――の大きく4つ。

日本は現時点において、ディマンドインフレはまだ来ておらず、コストプッシュインフレにしても賃金上昇は一部業種にとどまっており、今は「為替インフレ」が少しずつ進んでいる状態。焦点は4番目の「お金の価値が下がる」タイプのインフレだ。

■インフレは“麻薬”のようなもの!?

日本は年率2-3%程度の緩やかなインフレによって景気を回復させようとしているが、年率2%程度の“良いインフレ”で止めることができるか、“悪いインフレ”のハイパーインフレを引き起こすことにならないか。

今、日本がとっている政策は、貨幣供給量を増やして“お金の価値を下げる”方法だが、歴史上のハイパーインフレの元凶のほとんどが“お金の価値を下げる”方法によるものであり、非常に気を付けてやらないといけない。

例えば、第一世界大戦後のドイツ。アダム・ファーガソン著「ハイパーインフレの悪夢」に詳しいが、第一次世界大戦で敗れて膨大な賠償金を課せられたドイツ政府は、国債を発行し中央銀行に買い取らせ、どんどん貨幣供給→マルク安→輸出増→倒産件数減→失業率低下→株式市場の上昇→借金価値の下落→インフレが緩やかなレベルでは経済が活性化。インフレの初期は“救い”に見えたが、その後、インフレが忍び寄り、食べ物や衣服の価格の急騰→賃上げが追い付かない→庶民の生活が困窮→紙幣不足――へと進んだ。インフレは、最後は命取りになると分かっていてもやめられない、“麻薬のようなもの”であることを歴史は示している。

日本政府・日銀はこれらを教訓に、(1)名目金利を低位に抑える、(2)逆イールド(短期金利が長期金利より高い)状態にもっていき、名目長期金利の上昇を抑制、(3)緩やかな資産インフレに導く、(4)物価上昇率を賃金上昇率以内に抑える――ことに努めると考えられる。かくして“社会的大実験”である異次元緩和は成功裏に終わることになるのだろう。

■インフレが起きるとしたら何をすべきか

インフレが起きたときに想定される相場の反応と自然な対応としては、為替市場は円安が進行する可能性が高く、米ドル建て資産に投資したい。株式市場は株高が進行する可能性が高く、日本株を購入したい。債券市場は債券安(金利上昇)が想定され、債券ベアファンドや物価連動債の購入で対応したい。

リスク分散も肝要。為替はさまざまな外貨に分散投資したい。具体的には、すべて外貨投資するのではなく、円にも資産の半分を残したい。財政危機が顕在化すれば必ずしも円安になるわけではなく、初期は急激な金利上昇から円高になるケースも考えられるためだ。

株式は外国株にも分散投資したい。インフレが急激に進行し、スタグフレーション(不況と物価の持続的上昇が共存する状態)になる場合、日本株は下落する可能性もあるため。債券もリスク分散のため世界国債はある程度保有したい。インフレは日本だけになる可能性もあり、他の国の債券が買われる可能性があるためだ。

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