「ドル円高く、株肥ゆる秋」 1ドル=120円が視野に ドイツ証券・田中泰輔チーフ為替ストラテジスト語る

概況


為替分析に4つの時間軸

田中泰輔氏

田中泰輔氏

約6年ぶりの1ドル=106円乗せ(11日には107円乗せ)を見た為替相場だが、ここから一段の円安はあり得るのか。アナリストランキング金利・為替部門で5年連続トップを続けるドイツ証券の田中泰輔チーフ為替ストラテジストは、かねて大幅な円安を唱えてきた経緯がある。9日に「ドル/円高く 株肥ゆる秋へ」と題するメディア向けセミナーを開催し、以下のように語った。

「為替の変動要因は、いくつかの時間軸に分けて考える必要がある。(1)購買力平価など、インフレと成長の趨勢(すうせい)を反映した10-20年の超長期サイクル、(2)数年単位の景気循環による長期サイクル、(3)金融現象を受けた3カ月-1年の中期サイクル。そして、(4)投機による3カ月以内の短期サイクル――といったイメージだ。これらが全部ごっちゃに議論されがち」

「例えば、少し前までのユーロ堅調の背景を『かつての日本のようなデフレ化』といった構造要因でとらえていると、足元のユーロ急落といった事態に対応できなくなる。一時期のユーロ相場は、経済や金利とは無関係の資金の流れが大量に生じていた。欧州金融危機時のユーロ売りの巻き戻しや、アンダーウエート解消の動き、欧州金融機関による本国回帰のユーロ買いなどだが、こうした要因も一巡し、ファンダメンタルズに応じて、投機筋が安心して売れる環境が整った」

「今年に入っての米国経済は、企業投資が上向く一方、春先の寒波から住宅が低迷した。7月からは住宅も持ち直し、雇用、そして消費へと続く好循環がはっきりしてきた。今年後半から来年にかけて3%程度の経済成長を維持し、拡大基調は2016年まで続くとみている。ドル/円相場は、循環的な円安局面にあり、日銀“異次元緩和”の続く現在の金融環境がこれを増幅する形だ」

「数カ月円安が続いて、次の数カ月は円高といった揺り戻しは常にあるが、トレンドとしての円安の流れは変わらない」

「ドル円相場は米国2年物金利に沿って動くと言い続け、市場でも浸透してきたが、今後の金利上昇局面を迎えて、むしろ5年債のように反応の敏感な金利の方がベースとして重要になろう」

「投機筋が昨年末にかけて積み上げた大量の円売りポジションは、米国の寒波で当てが外れた。意気消沈した彼らの反対売買に、1ドル=100円割れの円高も想定されたが、大台が近づくたび強烈なドル買いが入ってきた。外貨建て資産の配分拡大が想定されるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)など国内機関投資家は、ドルが押したところに厚い買いを入れており、押し目買い水準を次第に切り上げることで相場のサポート役となったようだ。また、個人のFX売買も円売り・ドル買いポジションを積み上げた。25倍までのレバレッジ規制を経て、以前のように簡単にロスカットを強いられることもなく、レンジ取引ながら、ドル下支えに重要な役割を演じている」

「超長期サイクルの為替は通常、購買力平価の水準から上下各20%の範囲内に収まるため、現在の円安が限界との見方もあるが、積極財政・高金利下のレーガン政権時代など、突飛な状況下では大きく逸脱するケースが見られた。『米国3%成長・日本異次元緩和継続』の現状は突飛な状況と言える。1ドル=120円程度のオーバーシュートは十分あり得る」

「マーケット予想のほとんどは、足元の相場水準に、その時点での方向性を加味したもの。1ドル=100円から同105円となれば『110円目標』の声が出てくるが、結局、『今』を語っているにすぎない。長らく相場が膠着(こうちゃく)していた時期に当社が110円台への円安を掲げても反応は鈍かったが、この先、円安が進めば、そのこと自体が市場の円安観の視界を広げることになる」

「アベノミクス相場スタート時以来、米S&P500と為替換算したTOPIXは、ほぼ連動してきた。この先、1ドル=110円で換算すれば、TOPIX1400台(9日は1299)は十分ありそうだ」

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