知らないと怖い 不動産市場の裏 言うことなしの強い相場環境―米国利上げの号砲待ち―

REIT 概況


マーケットに厚みが増す

ロシアとウクライナの件から一時的な急落があったものの、アメリカ経済の強い回復により、相場は急回復を見せている。一方、日本においては、8月初旬に伝えられた、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国内株式の保有上限を撤廃するというニュースは、非常に印象的だった。今後は、GPIFの買い上げ、NISA(少額投資非課税制度)による年末までの駆け込み的な購入、アメリカ経済の回復、そしてアメリカ利上げ観測による円安傾向により、株式相場も拡大していきそうだ。

久しぶりの強い相場環境で、持たざる恐怖が再来している。GPIFはこれまで、「約130兆円ある全資産の12%(上限18%)を国内株式で運用する」と定めていたが、この上限を超えても買い増せるよう、9月にも新たな資産割合が決まるまでの暫定措置が取られた。9月以降は国内株式の割合を20%台に増やす見通しとなっている。現状から判断すると、例えば、国内株式の運用比率を1%増やせば、1兆円強の買い需要が発生する。仮に3月末実績の16%から20%に高めると、約5兆円の買いに相当する。なお、国内債券については現在の60%から40%台に大幅に落とす方針となっている。今の仕組みでは最低でも52%持つ必要があった。この下限を撤廃することで、国債も売りやすくなる。株式との調整で、結果的に国債の金利は上昇しそうだ。そうなると、J-REITを筆頭に不動産系のパフォーマンスは、しばらくはあまり良くなりそうもない。住宅ローンなどの長期の融資金利に関しても、これまで下がり続けていたが、下げ止まりを見せるかもしれない。

ひとまず、前週20日前後で、J-REIT(不動産投信)指数は年初来高値を更新してきている。グラフの三鬼商事のマーケット情報を見ると、空室率は昨年6月以降12カ月連続で回復傾向にあり、募集賃料も、1月以降7カ月連続で回復傾向を見せている。現在の好環境下、引き続き強い回復傾向が続きそうだ。結果的にJ-REITなどは、リーマン・ショックのような経済危機が起きない限り、しばらく保有し続けてもいいのではないか。むしろ、いつ追加で投資を行えばいいのか分りづらい状況となっている。J-REIT自体の公募増資も活発になってきており、直近7、8月でケネディクスレジデンシャル、GLP、そしてジャパンホテルリートが、それぞれ物件の取得とともに公募増資を発表している。少し前までは考えられないような状況になっている。非常にマーケットが強い証拠だ。

このような中、5月にプライスウォーターハウスクーパースが発表した「世界の都市力比較」では、東京が世界の30都市の内、昨年の10位から13位にランクダウンするという残念な発表があった。東京が10位以内に入った領域としては、「知的資本・イノベーション」「技術の成熟度」「経済的影響力」の3領域があった。経済的な影響力がまだ東京にあったのは非常に良かった。さらに「医療システム」に関しても1位を確保しており、高齢化に向けて着実に動いているようだ。一方、東日本大震災以降、「持続可能性と自然環境」の領域は今回も19位と、引き続き低評価になっている。これは、「自然災害のリスク」が、30都市中、最下位となっているからだ。自然災害のリスクはいろいろあり、これを全くゼロにするのは難しい。

そのほか、独立系のアセットマネジメント会社である、ケネディクスの運営するJ-REITが、物件取得のためにJ-REIT用ブリッジファンドを組成し、イデラキャピタルマネジメントは、主要都市の住宅に投資する第2号ファンドを組成している。稼働率などが安定しない物件に関しても売買が成立する可能性が高まっており、マーケットに厚みが出てきている。開発に関しては、オリックス不動産が、沖縄でヒルトンホテルをオープンさせた。新規開発では三菱地所子会社のロックフェラーグループがフロリダで大規模高級住宅を、三井不動産が万博記念公園内で複合型商業施設を、そして、野村不動産も、都市型商業施設の「GEMS」シリーズを積極展開し始めている。個人的には、開発が始まるとマーケットの末期のような気もしないではないが、現在の市場環境を見る限り、まだこの状態は続きそうに思える。

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