東証 平成25年1月の売買状況について マザーズ約定代金が急増

概況


「神風が吹いた、これでようやく一息つける」とほとんどの証券会社の社長がつぶやいたに違い無いだろう。

昨年11月の野田首相(当時)の解散発言以来始まった「安倍トレード」。一気に「円安・株高」の流れとなった。日経平均株価12週連続の上昇となり、なんと「岩戸景気」以来54年ぶりの事となった。

今回はこの堅調相場の中で、東証が1月の売買状況を公表しているので、これを杉本課長流に斬ってみよう。

現物市場は、TOPIXが9.4%上昇する中、東証1部の約定代金は、1日当たり2兆2000億円を超え、2008年10月以来の高水準であった。

ここで、市場別に昨年12月と1月を比較してみよう。営業日は同じ19営業日なので、そのまま月間の約定代金を比較したのが、下の表だ。

月間の約定代金(単位:億円)
2012年12月 2013年1月 伸び率
東証1部 302,826 418,458 138.2%
東証2部 810 1,335 164.8%
マザーズ 3,805 11,876 312.1%
ETF 2,006 2,952 147.2%
REIT 3,592 5,080 141.4%

これを見ると、東証1部は、1月は、昨年12月の138.2%になったが、東証2部は164.8%。何とマザーズは3倍増の312.1%にもなっている。ETF(上場投資信託)も141.7%、REIT(不動産投資信託)も141.4%だ。

1月の堅調相場は、アベノミクスにより円安となり、外国人投資家が大きく買い越したことも、原因だろうが、2部やマザーズの約定代金が1部以上に増える理由にはならないだろう。

やはり、先週のこのコラムでも書いたように、「信用取引無限回転」の影響が非常に大きいのであろう。もともとに極端に割安に放置されていた2部や、その成長性を全く評価されていなかったマザーズ銘柄が、上昇したことにより、個人投資家の注目を集め、そのことにより短期的な投機資金を呼び込んだ事により、大きく約定代金が増加したのであろう。

証券会社の業績も大きく改善されたようだ。2月2日の日経新聞の集計によると、主要20社の12年10-12月決算では、大和証券が黒字転換するなど、17社が損益を改善したようだ。ここで注目したいのは、個人投資家の取引高シェアの高いネット証券よりも、対面営業を主力とする中堅証券の収入に伸びが高かった点だ。

ネット証券は、SBI、カブドットコムなどの大手ネット証券が大口信用取引の手数料を無料にするなど、大口投資家へのディスカウント戦略を推進しており、約定代金が伸びても、収入がそれほど伸びないのに対して、対面証券では約定代金の伸びがそのまま収入の増加につながっているのであろう。

1月以降も堅調相場が続いて、約定代金も昨年10-12月に比較して大きく伸びているのと、1月からは松井証券が手数料・金利無料の「1日信用取引」の提供を始めているので、この傾向はもっと顕著な物となっているだろう。

また、ネット証券の中でも、その戦略によって収益にばらつきが出てきそうだ。ネット証券の中では後発で預かり資産が少なく、その代わり高回転率で売買シェアの高かったGMOクリック証券や、岡三オンライン証券の伸びよりも、ネット証券では老舗で預かり資産が大きかったマネックス証券や、カブドットコム証券の方が相対的に伸びが大きくなる可能性が高いだろう。現時点では、GMOクリック証券と、松井証券のみ開示しているので、こちらに関しては、次回のコラムで検証をする予定だ。

今回は神風が吹いたが残念ながら永遠には吹き続けるはずがなく、証券業界は今後どのように生き残るべきか考えるべきであろう。

その中で、注目すべきことがあった。大和証券グループ本社によるリテラ・クレア証券に対する公開買い付けだ。リテラ・クレア証券は、対面証券会社であったが、ネット取引においても老舗の会社であった。しかし、先日そのネット取引部門を立花証券への譲渡を発表したばかりだ。

大和証券グループとしては、どのような戦略の元、この公開買い付けを決めたのであろう。

不採算であったネット部門を切り離し、コストを下げて損益分岐点の下がった対面証券会社としてのリテラ・クレア証券会社を評価したのだろうか。三井住友FGと決別して独立系として生き残る為には、グループとしての販売力を強化するため傘下証券を増やしたのかも知れない。しかしうがった見方をすると、リテラ・クレア証券の筆頭株主が、サントリー・ホールディングスであることにも要注目だ。サントリー・グループは、中核会社の株式公開IPO(新規上場)の予定があるので、その絡みで売却しようと思っていたリテラ・クレア証券を引き受ける事によって、恩を売る事を考えた可能性もありそうだ。

単に引き受け絡みで仕方なく引き受けたのか、今後の生き残りを考えて戦略的に対面証券会社を傘下に収めたのか、次の大和証券グループの一手に注目が必要だ。

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