機関投資家に強力な“縛り” すべての道はROEに通ず

インタビュー 概況


藤島裕三主席研究員

藤島裕三主席研究員

4年株主総会のポイント

EY総合研究所ビジネス調査部 藤島裕三主席研究員に聞く

3月期決算発表を終えた企業の関心は、6月末にかけての株主総会に向けられている。このところ総会絡みの情報開示も増加し、築地魚市場は買収防衛策廃止を発表。22日には、公的資金のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が議決権行使で新たに独自指針を作ると報じられるなど、総会を通じて企業ガバナンス改善を目指すさまざまな動きも顕在化しつつある。日本の株主総会事情に詳しい、有力外資系シンクタンクであるEY総合研究所の藤島裕三主席研究員(写真)に話を聞いた。

――会社法改正案が4月に衆院通過し、社外取締役設置が事実上、義務付けられた影響などは。

「既に昨年、議決権行使助言会社トップの米ISSが『社外取締役ゼロ』の企業の経営トップ再任に反対推奨するポリシーを打ち出し、衝撃を与えた。今後は一歩進んで、社外取締役がいる・いないといった形式要件よりも、ROE(自己資本利益率)に象徴される経営の質を評価する流れがさらに強まりそうだ」

――今年はISSのポリシーに変更はあるのか。

「“端境期”に当たる今年の改定はないが、2015年以降、取締役選任議案にROEなど資本効率性を勘案することが検討されている。実際、ISSは今年初めにかけて、基準となるROEを絶対値とするか、業種比較で決めるかなどで市場関係者のパブリックコメントを募集した。この結果を踏まえ、おそらくは今年末までに英語版、来年2月ごろまでに日本語版の新ポリシーが発表されるのではないか」

――同業2位のグラスルイスに動きはあるのか。

「今年は新たに、監査役や社外取締役を対象とした『1円ストックオプション』に反対する。社内取締役が株価に責任を持つのなら悪くないが、彼らは行き過ぎに歯止めをかける立場だからだ」

――こうした議決権助言会社の影響力はどうか。

「例えば外国人株主比率が4割の会社なら、その半分はISS、4、5%はグラスルイスの助言通りに動くといったイメージ。全体の2割強だが、今なら3割程度に達しているかも知れない」

――国内機関投資家は。

「助言会社に最終的な判断を委ねるところは少ない。ただ、金融庁が2月に『議決権行使の方針や結果公表に関する方針の策定』など7原則で構成される『日本版スチュワードシップ・コード』を確定したことで、やはり議決権行使のスタンスが厳格化してこよう」

――ビジネス上の付き合いによる政策投資の保有株にも適用されるのか。

「スチュワードシップ・コード応諾を表明した機関投資家リストは6月初めに公表される。これを『無視』する選択肢は事実上ありえない。以前なら黙殺していた株主提案議案にも真剣に検討せざるを得なくなる。近年の株主提案議案の傾向として、役員報酬個別開示や、株主提案と会社提案の議案の扱いの平等化など“筋のいい”議案が増え、質が向上している」

――アクティビスト・ファンド復活も言われる。

「昨年来、米国で動きが活発化し、市場では『尊敬される存在』として認知されている。日本では、かつてのスティール・パートナーズの印象が強いが、彼らも利口になった。是が非でも株主提案、ではなく、企業側との対話を通じて要求を実現させる方向に転じている。(1)議案提出以前の話し合い、(2)株主提案した後に会社側と議案修正などを協議、(3)総会の場で信を問う――との3段階。こうした流れは機関投資家も同じこと。そもそも安倍政権がスチュワードシップ・コード成立を急いだのも、機関投資家の圧力で企業が動かざるを得ない状況を作り、投資効率向上で企業価値を高め、投資資金を呼び込む好循環を狙ったものだ。機関投資家の真の目的は『社外取締役を増やすこと』ではなく、投資対象企業の価値向上によってパフォーマンスを高めることにある。つまるところ、全ての要求や要望は最終的に『ROE向上』を目指すことに集約されると言っていい」

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