解説 「JPX日経400」とは 経営の“質”で銘柄選定

概況


ROE、営業利益など基準 日本企業のガバナンス改善促す

最近、株式市場で注目を集める新指数、「JPX日経インデックス400」とは一体、どのようなものなのか。具体的な説明に入る前に、まず、この指数が誕生するに至った経緯について触れてみたい。

従来の主要な株価指数と言えば、日本を代表する225社で構成される「日経平均株価」や、東証1部全銘柄を算出対象とする「TOPIX」が挙げられる。それぞれ、日本株全体の株価動向を把握するのに適した指標ではあるが、性格上、ファンダメンタルズや企業統治の良し悪しとは無関係に算出されるため、こうした指数をベンチマーク(運用指標)として運用する年金や投信などから、実態悪銘柄にも一律、機械的に資金が投じられていた。

結果的に、経営内容の巧拙が株価に反映されづらく、マーケットの経営改善圧力が高まらない、といった問題点も指摘されていたわけだ。

<自民党とも問題意識を共有>

こうした問題意識のもと、日本取引所グループ(JPX)と日本経済新聞社が共同で、経営内容に優れた400社で構成される新指数を共同開発。これが「JPX日経インデックス400」だ。例えば野党時代の自由民主党なども「『グローバル30社』インデックスの創設」を公約に掲げた経緯があるが、発想の源流を同じくするところだろう。

JPX日経400の沿革は、まず昨年5月14日、両者で新指数の共同開発で合意したと発表。7月30日に指数の骨子を明らかにした上で、11月6日には全構成銘柄と指数の詳細を発表。そして今年の大発会(1月6日)から、実際に算出・公表を開始。既に、同指数に連動する投信が多数設定され、ETF(上場投信)も上場されるなど、本格的な普及に向けた動きが加速中。企業ガバナンスを重視する外国人の評価も急速に高まっている。

<GPIF採用が普及、定着の起爆剤に>

また市場では、早ければ今夏にも、公的年金のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が一部ベンチマーク採用を決めるとみる向きが多く、実現すれば、日経平均、TOPIXと並ぶメジャー指数として、市場に定着することになりそうだ。

指数構成400社を選定する際のベースに、ROE(自己資本利益率)と営業利益を置いていることが、この指数の肝(きも)だ。具体的には、「3年平均ROE」と「3年累積営業利益」が各4割、「時価総額」が2割という、4対4対2のウエート付けの下、それぞれの上位銘柄から選出されることになる。

さらに、「複数の独立社外取締役選任」「IFRS(国際会計基準)適用」「決算情報の英文開示」の3項目についてスコア加点するなど、定性面も交え、幅広い観点から好内容銘柄をすくい上げている。また、日経平均やTOPIXのように東証1部上場企業に限らず、2部やマザーズ、JASDAQ上場企業も対象となるなど銘柄の間口の広さも重要なポイントだ。

<プロの運用に耐える工夫を凝らす>

このほか、浮動株時価総額方式で算出され、1銘柄あたりのウエートを1・5%以内に抑えるなど、実際に機関投資家が運用する際に支障が生じないような仕組みとなっている。

昨秋、指数の詳細が発表される前の段階では、クオンツアナリスト筋などで、「高ROE銘柄の長期的なパフォーマンスは決して高くない」などと疑問視する向きもあった。というのは、株価のリターンが高まるのはROEの上昇過程であって、高ROE銘柄を機械的に組み入れても、うまくいかない、との理由だが、さまざまな工夫を凝らして実際にでき上がった新指数は、過去にさかぼのって試算するバックテストなどからも運用成績は上々。懸念の声も、ひとまず解消された格好だ。

そして、とりわけ注目されるのは、JPX日経400が市場で“市民権”を得るにつれ、市場参加者や上場企業の間で、資本効率やガバナンスの改善への意識が高まっていくという波及効果だ。

既に、採用銘柄選定に漏れた複数の企業から、今後の採用に向けて経営改善を進めるといった動きも漏れ伝わってきている。多くの企業が、この指数採用を視野に企業価値向上に取り組んでいけば、日本株全体の底上げにつながる可能性も決して小さくはないだろう。

<世界でも随一>

こうしたファンダメンタルズの側面も考慮した指数は、海外でもクオリティインデックスなどと呼ばれ、知られているが、それはあくまでも、S&Pなど指数算出会社が顧客向けに提供する数多くの指数の1つ。こうした指数を、取引所自ら算出、公表する事例は、ほかに韓国証券取引所(KRX)がある程度だが、積極的に普及、定着を図っているのは、世界でもJPX日経400くらいのもの。東証の“本気度”を踏まえれば、この指数が、この先、一段と存在感を高めていくことになるのは間違いないだろう。

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