なるか?! 初の「円安の午年」 三井住友アセットマネジメント・宅森昭吉チーフエコノミストに聞く

インタビュー 概況


サッカーW杯、本戦入りの予兆

宅森昭吉チーフエコノミスト

宅森昭吉チーフエコノミスト

力道山に学ぶ五輪経済効果

昨春の“異次元緩和”をはじめとするアベノミクス政策発動後、順調過ぎるほど順調に推移してきた日本経済および日本株だが、2年目となる今年は、4月の消費税率上げも試練となり、あらためて真価が問われてくることになりそうだ。当代一流のエコノミストにして、スポーツ、流行など身近な話題を通じた経済分析でも定評を持つ、三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミスト(写真)に、2014年展望などを聞いた。

―まずは消費増税の影響が気になるところ。前回1997年は急激な景気悪化につながったが。

「国内主要エコノミストを対象としたESPフォーキャスト調査を見ると、まず、2014年1-3月の総合景気DIは100%。つまり全員が景気拡大を予測している。この期間は、増税前の駆け込み需要が生じるのだから当然だが、その後の予測が興味深い。増税直後の4-6月こそ6.1%に急落するが、7-9月78.0%、10-12月93.9%、15年1-3月95.1%となっている。5兆5,000億円経済対策の効果もあるし、悪影響は一過性のものとの認識で一致している。そもそも1997年当時の日銀短観を見ても、消費増税直後の景況感は思いのほか底堅いものだった。これが大きく下ブレするのは、7月のアジア通貨危機、そして秋口からの金融危機を迎えてからのことだ。足元の短観内容は、当時の増税前の水準を上回っており、何か想定外の外的ショックが生じない限り、景気腰折れの懸念は乏しい」

―過去の午年は、円高に振れる例が多かったとか。

「変動相場制移行後の過去3回はすべて円高ドル安に振れ、平均13.3%の円高も12カ月中最大だ。とはいえ、日本が異次元緩和を続ける一方、米国は量的緩和縮小を発表しており、方向性の違いを考慮すれば、今年は、初めての『円安の午年』となるのではないか。1ドル=110円くらいまでの緩やかな円安を想定している」

―それなら日本株も一段高が期待できそうか。

「逆に、日経平均は夏ごろにかけて、いったん1万4,000円前後まで下げる可能性があるとみている。一過性とはいえ、4-6月には4-5%のマイナス成長が想定されるほか、リーマン・ショック以来の季節調整のゆがみから、春と夏は米国経済指標に弱めの数字が続きそうなことも背景だ。消費税の影響が、さほどではないことが分かってきたあたりから切り返し、1万6,000-7,000円へ向かうといった流れか」

―景気に関する身近な話題を聞いていきたい。まず「今年(2013年)の漢字」は。

「『倍』を推していたのだが…。1位『輪』の5.59%に対し、3位『倍』は4.48%と僅差(きんさ)だった。いずれにせよ、ベストテンに選ばれた漢字は、8位の『偽』を除けば明るいものばかり。世の中のムードが明るくなったことを示す」

―東京五輪開催決定も雰囲気を明るくした。

「前回、東京五輪が決定したころと似通った面も多い。景気の谷から1年弱経過した59年5月に開催が決定し、その月の日経平均は+7.7%。今回も景気の谷から1年弱経った昨年9月に東京五輪が決まり、同月の日経平均は+8.0%だ。なお、59年5月からは、2年半にわたって景気拡大した」

―東京五輪の経済効果も期待できそうか。

「さまざまな波及効果が想定される。公式スポンサーの関係で、直接、五輪の名称をビジネスに使えないが、それもアイデア1つだ。先の東京五輪を、うまく利用したのは力道山のプロレスだった。街頭テレビ時代の熱気も下火になっていた59年春、各国代表を招いた『ワールド大リーグ戦』を開催し、大成功を収めた。ちなみに、見せるスポーツであるプロレスはこれまでも、時代の流れをうまく取り込んできた。高度成長期に、体格で見劣りしない馬場、猪木が外国人と互角に戦い、国際化時代には海外人気選手と組んだタッグマッチが人気を博し、軽薄短小時代は藤波、タイガーマスクのジュニアヘビー級人気。ベンチャー勃興(ぼっこう)期は大仁田厚が趣向を凝らしたデスマッチ路線。地方の時代で、みちのくプロレス。男女雇用機会均等法の時代で男女ミックスドマッチ――といった具合だ。その意味では、元横綱の曙がメジャー団体のチャンピオンになったことも象徴的。元横綱レスラーは4人目だが、シングルのチャンピオンは初だ。格闘技の試合で負け続け、地に堕ちたところからの復活。最近、外国人社長就任も増えた日本企業の復活劇を暗喩(あんゆ)しているとは言えまいか」

―ほかにも身近な話題で何か面白いものは…。

「昨年10月の金融機関店舗強盗が30日までゼロだった件(最後の31日に郵便局強盗)や、被災地3県がそれぞれ賞を取った件など話し出したらキリがないが、ここではサッカーの話題を取り上げたい。過去のW杯、五輪男子サッカーで、末尾が4の日は『9勝1敗1分』(唯一の負けも、強豪アルゼンチンに1点差の惜敗)、ほかの日は『8勝16敗6分』。先に発表されたW杯予選はコートジボワール戦とコロンビア戦が、この『4の日』であり、決勝トーナメント入りの可能性が高まった。実現すれば、国民に元気が出て、消費などを通じた経済効果は大きなものになるとみている」

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