激動の公的年金運用 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人) 三谷隆博理事長に聞く

インタビュー 概況


ROE新指数の“問題点”とは

三谷隆博理事長

三谷隆博理事長

基本ポートフォリオ見直し、前倒しへ

2014年の“注目セクター”として脚光を浴びるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)。昨秋、政府の有識者会議が運用見直しに関する最終報告書を提出。国債中心の基本ポートフォリオ見直しや、JPX日経インデックス400のベンチマーク採用などに市場の関心が高まっている。その実態はどうなのか。三谷隆博理事長(写真)に話を聞いた。

――報告書の感想は。

「問題意識は共有している。デフレからインフレの時代に大きく局面転換すれば、超低金利の国内債券が基本ポートフォリオの6割を占める現状でいいのか、といった点だ。報告書は極めて重く受け止めており、タイムスパンに多少のずれはあるかもしれないが、できることからやっていきたい。従来の伝統的4資産(国内債券・外国債券・国内株式・外国株式)以外の新しい運用対象についても、かねて研究を続けてきた。ただし、実務的には法律上の制約も伴う。法改正は厚生労働省マターであり、組織の問題も含めて、厚労省との連携が必要だ」

――「1年をメド」とされた基本ポートフォリオ見直しスケジュールは。

「次期中期計画の始まる15年4月から前倒ししたいが、『今すぐ』というわけにもいかない。2、3月ぐらいに厚労省の『財政検証』が出てからとなるが、今回は、雇用者年金一元化(厚生年金と共済年金)を控える。まず関係4大臣の『運用基本指針』策定を受け、GPIFと3共済がモデルポートフォリオを決めてからの作業となる。事前の『頭の体操』はできても、おそらく5月の連休明けごろまでは動けない。具体的な時期については何とも言えない」

――有識者会議の伊藤隆敏座長(東京大学大学院教授)が少し前、国内債券35%、国内株式20%(現状は各60%、12%)といった独自の試算を発表していたが…。

「伊藤さんの気持ちは分かるが、あくまでも個人の意見であり、それに縛られるということではない。国債は、時価評価で急落となる場面があったとしても、償還時まで持っていれば(国がデフォルトしない限り)確実にプラスが残る。元本リスクのある資産をどれだけ増やせるのかは、いろいろな検討が必要になる」

――物価連動国債は。

「過去の発行分とは商品性が異なり、元本保証されるようになった。今後のインフレリスクを踏まえれば、理念的に極めて好ましい運用対象だが、現実には、流動性が問題となる。1月の発行分を含めても、まだ6000億円分にしかならない。120兆円規模のGPIFにとって、意味のある金額を買えるのか、となる」

――「直ちに取り組むべき課題」として新たなベンチマークの採用が提言された。東証の斉藤社長はJPX日経インデックス400指数の発表会見で、「GPIFに説明に行って採用を働きかけたい」と話していたが…。

「斉藤社長ご本人にはお会いしていないが、事務方は説明を受けているし、有識者会議のご推薦であることも承知している。ただ、ベンチマーク変更は、実際には難しい。TOPIX構成銘柄は1700以上あり、これを売って新指数採用400銘柄を買うと、差し引き1300銘柄を売却することになる。浮動株の約7%を保有するGPIFの売りは恐慌を招きかねない。かつてとは違って新規資金の流入もない(むしろ資金流出が継続中)。また、新指数自体も、理念的には共感できるが、東証公表の過去6年間のパフォーマンスは、年によってTOPIXに勝ったり負けたり。さらに、定期入れ替え銘柄を読みやすい点も、市場の先取り売買を招き、新規採用銘柄を割高に買って除外銘柄を安値で売ることになりかねない。運用機関としては重要な問題であり、今は『検討中』としか言えない」

――来年度の資金流出には、どう対応するのか。

「基本的には満期を迎える国内債券の元利金を充てる。来年度流出想定額約5兆8000億円全てとは言わずとも、それに近い線は確保できる。有識者会議の伊藤先生は、国内債券を早急に52%まで落とすべきとされるが、その程度までなら、来年3月くらいまでに市場売却を伴わない自然体で達成できそうだ」

日本株「まだまだ割安」

――日本株の水準をどうみているのか。

「米独などで最高値更新が続く中、日経平均は、リーマン・ショック前の07年高値(1万8261円)を大幅に下回る。今後の収益改善期待も踏まえれば、まだまだ割安だと思う」

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