株式相場の現状・展望 アベノミクス相場第2幕 太田忠投資評価研究所 太田忠社長に聞く

概況


太田忠投資評価研究所 太田忠社長

太田忠投資評価研究所
太田忠社長

企業収益成長に結びつくかが焦点
業績の裏付けのある出遅れ大型株に注目

太田忠投資評価研究所 太田忠社長に聞く

アナリスト、ファンドマネジャーを経て、2009年に個人投資家を対象とした投資講座を開催する「太田忠投資評価研究所」を設立した太田忠氏。同社のモデルポートフォリオはパフォーマンス良好で、この4年半の累計パフォーマンスは+113.8%に及ぶ。日本株をどう見ているのか、どういったところに目を配っているのか、太田氏に聞いた。

■現状認識――アベノミクス相場第1幕終了

「昨年11月にスタートしたアベノミクス相場は、新政権への期待を原動力に大型株も小型株も大きく上昇したが、5月にクラッシュ。それまでの上昇スピードが速かったため、5月以降、大きく下げた。期待先行のアベノミクス相場第1幕はこれで終了したといえる」

■当面の見通し――アベノミクス相場第2幕始動へ 年末に向けて5月高値にトライ

「次のアベノミクス相場第2幕では、アベノミクスが企業収益成長に結びつくかが焦点になる。その意味で9月はとても大切な月だったが、(1)2020年東京オリンピック決定、(2)米金融緩和継続、(3)消費税率引き上げ――と三役そろい踏み。かつ、法人税引き下げの話も出てきた。これにより期待がつながれ、第2幕での相場上昇の条件がかなり整ってきたとみている」

「前回の大きな上昇相場は小泉政権の時にさかのぼる。当時は、2005年の郵政解散選挙での圧勝を受けて大きく上昇→2割下落→世界経済拡大を背景に上昇して2007年に高値形成――と推移した。前回と今回には類似性があり、相場リズムからしても、第2幕の幕開けは近いとみる」

「日本を取り巻く環境は悪くはない。消費税引き上げは、短期的にネガティブかもしれないが、財政への懸念後退につながり、世界に安心感をもたらす。シリア情勢、米国の予算問題や債務上限問題などが横たわっているが、これらは一時的な問題。日本株は年末に向けて、5月高値(1万5,942円)をトライしにいくとみている」

■第2幕の物色動向――業績の裏付けのある出遅れ大型株(金融、商社、海運、機械など)に注目

「当面は、『為替』『7-9月期決算』の2点がポイント。第1幕では何でもかんでも上がった。特に小型株は業績の裏付けのないものほど上がった。しかし、第2幕ではそんな能天気なことにはならず、決算が良ければ上昇、悪ければ下落する展開になるとみており、きちんと銘柄選択をすることが肝要と考える。第1幕で人気を集めたテーマ株のリターンマッチはなく、値動きだけで投資すると大やけどを負いかねない」

「大型株と小型株とで分けてみると、これからは大型株に分がある。東証1部の中堅銘柄、大型銘柄には、業績の裏付けがあるにもかかわらず、割安に置かれているものが多く、第2幕ではこうした銘柄が評価されよう」

「銀行など金融関連にも出遅れ銘柄がある。例えば、みずほFG(8411)。株価は第1幕ではほとんど動かず、200円台で“寝た状態”となっている。一方、収益は改善傾向にあり、2007年3月期並みの収益を確保する見通し。当時の株価は800円程度(株式分割考慮後)だったことをかんがみても、出遅れ感があろう。これに限らず、金融関連には面白い銘柄が転がっている。商社や海運、機械、不動産にも出遅れ銘柄がある。今後を見据えると、ここもとはそうした銘柄の下値拾いのチャンスといえるのではないか」

――2009年3月の「太田忠投資評価研究所」設立から4年半が経過しました。その間のパフォーマンスは、TOPIXが+54%、JASDAQ平均は+87%であるのに対し、御社のモデルポートフォリオは+113.8%と非常に良好です(直近パフォーマンスは9月単月で+9.8%、今年1-9月累計では+34.0%)。資産運用の秘訣(ひけつ)を教えてください。

「銘柄選択も大切だが、それよりも大事なのが、『マネーマネジメント』。リスク管理を徹底し、キャッシュポジションを相場に応じて変化させ、時間的分散投資を図るというのが、弊社のモデルポートフォリオ運用の特色。相場に負けないようにするのが運用の肝と考えており、1カ月で運用資産がマイナス5%以上にならないよう、ロスカットルールとして『マイナス5%ルール』を徹底し、逆指値などを活用してポートフォリオを管理している。これにより、この4年半で1度たりとも運用資産のマイナスが5%を超えた月はない。モデルポートフォリオの累計パフォーマンスは+113.8%、つまり2.1倍だが、アベノミクス相場のどこかの時点で3倍にしたいと思っている」

――太田さんは読書家と伺いました。よろしければ、株式投資に役立つ本を教えてください。

「1988年に証券界に入ってから、できるかぎり努めて経済や証券関係の書籍を収集し、先人たちの知恵や知識を蓄えようとしてきた。これは私が文学部フランス文学科卒という、およそ証券業務とはかけ離れたところから出発しているためだ。同期入社組は経済学部や商学部の出身者が多く、彼らに比べると文学部で身につけた知識は役に立たず、当時の私にはせめて同じレベルに追いつきたいという切実な問題があった。あれから25年が経過した」

「株式投資に関する書籍は膨大な数に上り、自分にぴったりくる本を探し当てるのは至難の業。私の読書経験が何らかの役に立てばという思いから、一見、株式投資とは直接関係はなさそうだが実は大変参考になる“知る人ぞ知る”といったたぐいのものも含めて良書・好著を紹介する『投資をするならこれを読め』(日経ビジネス人文庫)を6年前に出した。投資の極意、チャートの見方、銘柄の見極め方を解説するものから、統計数字の裏側に潜むウソ・ハッタリを見破り、だまされない技術を身につける『統計でウソをつく法』、ツキの正体を科学的に解明した『ツキの法則』など、さまざまな観点からピックアップした。良書、好著に触れるきっかけになれば幸い」

――最近では2013年8月に著書『株が上がっても下がってもしっかり稼ぐ投資のルール』(日経ビジネス人文庫)を出されました。

「タイトルにある通り、上昇相場で資産を増やすポイントのみならず、下落相場でも資産を増やすポイントもまとめた。今年12月をメドに投資初心者向けにイロハを伝授する本も出す予定」

「投資の世界では無知が一番良くない。とにかくそういう状況から脱却できる人を一人でも増やしたい思いだ」

――ご自宅に2万冊の収容能力のある書庫があるとか。

「いろいろな本を読むと視野も広がるので、古本屋にも足を運び、これまでさまざまな本を手に取ってきた。30歳まではいわゆる自己啓発本も熱心に読んだが、『世の中で成功するには自分のやり方しかなく、自分のやり方を自分で見つけるしかないとない』と気付いてから、そのたぐいを一切読まなくなった。投資でも、自分で考え、自分で判断する力が大切で、判断するときの軸となるものを自分で見つけることが大事だと思う。人のアドバイスにしても、善意で助言する人もいるが、悪意で言う人もあり、結局、自分で判断して行動するしかない。個人投資家の皆さんには、『成功はあなたの中にある。“隣の芝生は青い”とうらやましがる必要は全くない』と言いたい」

――最近思うこと。

「行き過ぎた便利を追求するのは良くないのではないかと。自動車の自動運転しかり、iPS細胞しかり。私は自然に反することを追求するのには反対であり、今の流れは人類にとってやってはいけないことだと懸念している。また、今の世の中、自分で気をつけないと、『ネット中毒』など、すぐナントカ中毒になってしまう。時間は有限、有効に使いたいものだ」

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