大手主導の証券界に“新風” 個人投資家応援証券評議会議長 マネックス証券・松本大社長に聞く

インタビュー 概況


個人投資家応援証券評議会議長  マネックス証券・松本大社長

個人投資家応援証券評議会議長
マネックス証券・松本大社長

公募問題などで議論喚起 第1弾は「税制」提言

とかく機関投資家など大口投資家の意向が重視されがちな証券界。かつての売買手口非公表化の背景でもあったし、また小口の個人投資家を“ないがしろ”にする業界の体質が、昨今の「公募増資」や「インサイダー取引」の問題を引き起こす遠因になったとも言えるだろう。こうした中、個人を顧客基盤とする証券会社(現在20社)が結集し、日本証券業協会(日証協)の内部組織として11月に立ち上げた「個人投資家応援証券評議会」が高い関心を集めている。評議会設立の立役者で議長を務める、マネックス証券の松本大社長(写真)に話を聞いた。

――評議会を結成するに至った経緯を聞きたい。
「5月ごろから、公募やインサイダーの問題について、日証協の証券戦略会議などの場で徹底的に話し合うべきと主張してきたが、その後も何の動きも出てこなかった。日証協は、金融庁幹部の天下り機関ではなく、業界の自主規制団体だが、肝心の証券界に、あまりにも議論が少なく、『昨年と同じこと』をただ繰り返すばかりだ。そこで、個人投資家だけを顧客とする証券会社で集まり、新しい業態別評議会を作ることにした。7月の当社決算発表後の会見で最初に表明。10月16日の日証協戦略会議の席で55分に及ぶ趣旨説明を経て承認された。当初11社で発足し、現在は20社に拡大している」

――評議会の目的は?
「まず、発行市場・流通市場・法令・取引所ルール・協会ルールなどのさまざまな問題について、個人投資家の視点で考え、『こうあるべき』という提言を取りまとめ、実現を働きかけていくこと。そして、もう1つは、日証協内部で議論を活発化させるための“触媒”になることだ」

――ネット証券4社の他は地方の中堅証券の目立つメンバー構成だが、もっと規模の大きい会社が加わってもいいのでは。
「『個人を主要顧客基盤とする』ことが加入要件なので、大手や銀行系証券などは該当しない。また個人顧客が主体であっても、人事面で大手証券系列に近い証券会社は少なくない。地方証券にはオーナー経営も多く、現メンバーは完全な独立系ばかりで、しかも有数の論客ぞろいでもある」

――個人が主対象の証券会社に絞る理由は何か。
「従来のさまざまなルールや慣行は、資本調達者(発行企業)を重要な収益源とする証券会社を中心に作られてきた。もちろん、大手証券抜きで証券界は成り立たないが、だからといって、大手の論点だけで議論していても証券界は良くならない」

――「大手主導で作られたルール」で、具体的にどんな問題があるのか。
「例えば、金商法で禁止された『大量推奨販売』を回避するため、個別銘柄の推奨は5銘柄以上とされるが、こうした規制を、大手証券にも、ネット証券にも、地場証券にも、一律に適用するのは営業現場の実情にそぐわない。そもそも、銀行業であれば、国際基準行と国内基準行、都銀・地銀・信金・信組や漁協・農協など業態別のルールが、きめ細かく定められているが、証券のルールは1つだけだ」

――ほかにも“一律ルール”の弊害を挙げてほしい。
「『終値関与』や『公正価格形成』といった問題では、機関投資家による100万株単位の注文も、個人がたまたま出した1株も同様に扱われる。一見、『合理的』に見えて、実は非合理的。流動性抜きに『株価』を語っても意味がない。こうした例はほかにも多い」

――評議会発足後の活動内容は。
「顔合わせとなる11月5日の初会合で議論の対象となる8つの課題(公募、インサイダー、信用取引ルール、取引所問題、銘柄推奨規制、税制、次世代に向けた資産形成、証券投資普及)を決め、12月4日の会合で『税制』を議論。17日会合での確認を経て、日証協の証券戦略会議に提言を送った。月に1、2回会合を開いて毎回、課題に対して実行可能な提言を行い、キチンと結果を出していきたい」

――最初に「税制」を選んだのは時期的な要因か。
「政府の税制改革大綱策定前の税制論議の盛り上がるタイミングを選んだ。単なる『スローガン』に終わるのではなく、結果を出すことが主眼。焦点の日本版ISA(少額投資非課税制度)に対し、『ここをこう直せば本格的な普及につながる』という建設的な提言を行った。譲渡損失の繰越控除についても、世界の潮流に反して、わずか3年間しか認められない現状に問題提起した」

――評議会立ち上げで、“変化”は生じたか。
「会う人、会う人に『やってるねえ』と言われ、大手証券からは『お手柔らかに』と冷やかされる。日証協が11月に公募増資問題などの『あり方分科会』を設置し、副委員長を仰せつかった。こちらでも活発な議論を喚起していきたい」

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