REITアナリストに聞く 短期調整も、長期的には上昇基調続く

REIT 概況


田澤淳一氏

田澤淳一氏

バークレイズ証券 田澤淳一氏

東証REIT指数は、安倍政権が本格的に発足して、今年年初来28%上昇している。株式のマーケット全体を表すTOPIXの33%の上昇とほほ同じ状況にあり、おおむね全般的な景気の回復とともに上昇してきた格好だ。しかし、9月1カ月では16%上昇しており、TOPIXの7.8%をかなりアウトパフォームして、強い状況が続いている。東京オリンピックが決定したことで、景気が盛り上がり、色々なビジネスが活発になって、オフィスの賃貸需要が増えるのではないか、モノの売買が活発化して商業施設を貸すREITの賃料が上がってくるのではないかなどの期待が背景にあると考えられる。また不動産ファンダメンタルズの良さが注目されている。基準地価の上昇や、空室率の低下継続、賃料の下げ止まりなどのデータが増えている。政府サイドの成長戦略や、中長期的な法人税引き下げなどの期待感もある。また政府は公的年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産運用見直し議論で、これまでの国内債運用中心から株式などほかの資産への分散投資を促進するように提言、J-REITへの投資も検討すべきと指摘したこともあって、政府系の年金基金がJ-REITへの投資姿勢を強めるのではないかとの期待感も高まっている。東証REIT指数は年初1,100前後からスタート、4月の日銀による大規模緩和を打ち出す直前には1,700まで急伸。しかしここから6月まで1200台に急落、その後6月から8月まで1,200から1,300台が続いた。その後9月に急上昇し1,500を超え、10月にはやや調整し1,400台のレベルになっている。

REITを見る上でさまざまな指標はあるが、われわれは主に2つの指標を見ている。1つは分配金利回り。分配金利回りは2006年から07年の不動産市況が盛り上がった際は、特に不動産バブルの時は2%台まで突っ込んだ局面はあったが、好況期でもおおむね3-4%台で推移。その点、現在は既に底に近い水準まで来ており、ここから利回りの低下がさらに進んで、株価がどんどん上がっていくという状況にあるわけではない。足元で株価が短期的に上がってしまっているので、今後はそう簡単ではないとみている。もう1つの指標はNAVプレミアムで、純資産価値に対して株価にどれぐらいプレミアムがついているかを示す指標。株式市場でのPBR(株価純資産倍率)のような概念だ。04-06年の不動産市況の回復局面では株価が約40%割高についている。不動産バブル時は60-80%に達したが、これは行き過ぎと考えている。空室率低下など現在の不動産市況の回復局面としてNAVプレミアムは40%が妥当な水準ではないかと判断している。現在は31%だが、今後、適正な40%まで戻ると考えると、東証REIT指数は現在の1,400台から、今年年末-来年3月末にかけて1,600が中長期的な目標ターゲットになると予想している。

短期的には調整があるのではないかと考えている。9月のようなピッチでの上昇は無理で、揺り戻しがくるとみている。安倍首相による正式な消費税引き上げの表明をきっかけに、これまで織り込んでいたとはいえ、もう少し様子を見ようとの動きが出ることも考えられる。また、日銀が10月末に展望レポートを発表するが、そこで追加の金融緩和が示唆されるのではないかとの強気の期待も一部ではある。当社では来年3月の展望レポート公表のタイミングで追加緩和が出されると予想しており、10月展望レポートで失望となると調整が続く可能性がある。REITは時価総額が成長してきたとはいえ、まだ流動性が高いマーケットではないため、投資信託や外国人、地銀などの動きで株価が変化する。今回、中間決算期の9月は株価水準が急上昇し、金融機関は利益の確定ができたことで、取りあえずここで一休みという気持ちも働きやすい。需給面からも調整となろう。

長期金利からは、黒田総裁の金融緩和前後には0.5%、特に発表前後には0.4%台まで下がったが、その反動でその後一時1%近くまで急騰するなど乱高下した。ここにきて0.7%割れの水準で比較的落ち着いた動きとなっており、これも株価の1つの安心材料となっている。しかし、今後、長期金利はこれ以上に低下して、REITの株をさらに押し上げると読むのはちょっと楽観的過ぎるとみている。一方、消費税引き上げが見送られた場合の日本の財政破たんへの懸念による長期金利の急騰リスクは、今回の消費税引き上げ表明により消えた。もう1つ、景気が予想以上に回復してくると長期金利はインフレを織り込んで上がるが、今後、相当強い経済成長やインフレ目標の2%達成について市場は織り込んでいないし、来年の大型の追加緩和も予想され、長期金利の上昇は抑えられると考えられ、REITにとっては大きな懸念はないと予想している。また、REITの場合、借り入れの7割は長期で金利は固定化されていることで、仮に金利が上がってもすぐに利払いが増えて、分配金が影響を受けるということもない。

REITのファンダメンタルズが好転しているため、REITは長期的には上昇基調は続くだろう。当社のシナリオとしては、成長戦略の内容がもっと明確化し、追加緩和が行われ、経済の拡大が続くと、インフレが上昇して不動産売買が活発化、不動産市況がさらに上昇すると、東証REIT指数は1,800を目指すと考えている。

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